はじめに

恋人と高級レストランでディナーを楽しみ、ケーキを食べた後にプレゼントを交換する――。ひと昔前まで、クリスマスといえば“恋人たちの特別な一日”というイメージが定番でした。ですが、今やそうした過ごし方は過去のものであることが、民間の意識調査から浮かび上がりました。

クリスマスといえば「家族と過ごす」あるいは「一人で過ごす」という人が増えており、外食をする代わりに自宅でまったり過ごすのが、今の時代のクリスマススタイルといえそうです。こうした過ごし方の変化は、クリスマスの食卓の代名詞であるクリスマスケーキにも現れています。


調査結果から見えた過ごし方の変容

1万人を超える回答者のうち、46.1%が「クリスマスも普段とあまり変わらず過ごす」――。調査会社のマイボイスコムが2017年1月に実施したアンケートからは、少し意外な結果が出てきました。

こうした回答は2010年代に入ってから顕著に増え始め、ここ数年も4~5割の高い水準を維持しているといいます。同社の担当者は個人的な見解としたうえで、「こうした傾向はお正月にも言えます。季節行事に対する全般的な関心度が低下していることの現れではないでしょうか」と指摘します。

クリスマスも普段と変わらない過ごし方をする人が増えた影響か、上図のように、1世帯でクリスマスケーキに使う金額も2010年代に入って低下傾向にあります。従来は恋人同士や子供の多い世帯で大きなホールケーキを一緒に食べるケースが多かったのに対し、今は一人で過ごすスタイルが多くなっていることも影響していると考えられます。

ミニストップは一人用に照準

クリスマスケーキに使う金額が減っているということは、一見すると「クリスマスにもうケーキはいらない」という気持ちの現れに思われるかもしれません。ですが、必ずしもそうとは言いきれません。

恋人や家族みんなでホールケーキを食べる代わりに、「一人用」や「お試し用」「シェアケーキ」といったこれまでにない食べ方が登場。新たなスタンダードになろうとしているのです。

中でも話題になっているのが、コンビニ大手のミニストップが販売している一人用ケーキです。その名も「~おひとりさま用~苺ショートケーキ」(税込み550円)という、なんとも直球なネーミング。ただ、商品そのものは北海道産純生入りクリームを配合したホイップクリームと、しっとりしたスポンジで仕上げた本格派です。

ミニストップが販売する「~おひとりさま用~苺ショートケーキ」

12月19日から店頭に並び始めており、顧客からの反応は上々。今年が初めての商品展開となりますが、発売の1週間以上前からコールセンターに「この商品を買いたい、楽しみだ」という問い合わせが入っていたそうです。ネット上ではSNSを中心に、「食べきりサイズがうれしい」「かえって寂しくなる」と賛否両論の意見が交錯しており、戸惑いはあるものの、おおむねポジティブに支持する人が多いようです。

お試し用やシェア用も上々の評判

ミニストップは、一人用のクリスマスケーキ以外にも力を入れています。クリスマス期間限定商品の「お試し用」のミニサイズも事前販売しています。「小さなベルギーチョコノエル」(同280円)がそれです。

クリスマス前にお試しで食べてもらい、気に入ったらフルサイズの大きなケーキを購入してもらうという流れを作るのが目的です。こちらも評判は良さそう。「お試し用サイズでもリッチな気分になれた」「お試しケーキがおいしかったので、同じケーキのファミリーサイズも予約した」との声が上がっています。

ほかにも、1パックで5種類のケーキが楽しめる「シェア用」のケーキを12月20日から25日まで展開。友人や家族と集まり、いろいろな味を食べ比べしてもらう狙いです。こちらもTwitterやFacebookに写真がアップされるなど、SNSを中心に盛り上がりを見せています。

大手コンビニや菓子メーカーも熱視線

一人用やシェア用のクリスマスケーキを出しているのは、ミニストップだけではありません。コンビニ大手3社(セブン、ローソン、ファミマ)でも、一人用ケーキをクリスマス前に1個300~350円という価格帯で発売。一人暮らしでクリスマスにパーティーを開くことはないけれど、雰囲気だけでもクリスマス気分を味わいたい、というニーズは強いようです。

こうした動きは、コンビニ以外にも広がりを見せています。菓子メーカーのシャトレーゼは、ミニケーキやプリン、ピザなど8種類のパーティーメニューをセットにした商品をクリスマス向けに用意。シェア用ニーズの取り込みを図っています。

恋人からおひとりさまへ、特別な日から普段と変わらない日へ、クリスマスの過ごし方は時代とともに変化しています。しかし、「クリスマスにケーキを食べる」という習慣は、今も根強く多くの人の脳裏に染みついているようです。クリスマスケーキは今後も形を変えながら進化する動きが続いていきそうです。

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