はじめに

野菜の価格高騰が続いています。農林水産省の食品価格動向調査によると、キャベツは平年の約1.9倍の356円、白菜は同2倍以上の351円(いずれも1キログラム当たり、2018年2月5日の週)まで上昇。先月末には佐賀県で畑から白菜500個が盗まれるなど、深刻な状況になっています。

例年にない野菜の高値が続く中、その影響を受けて、売り上げを伸ばしている意外な製品がありました。2002年に発売された「カゴメ基本のトマトソース」です。

ここ数年は毎年、過去最高の売上高を更新しており、順調に売り上げを伸ばしています。なぜ発売から15年を経ても、勢いは衰えないのでしょうか。その理由について探りました。


群を抜く高リピート率の理由

カゴメ基本のトマトソースは、トマトと炒めたタマネギ、ニンニクを長時間煮込んだコクのある味わいが特徴です。2002年に発売され、今年で16年目を迎えます。

イタリア料理は1980年代に日本でブームになると、1990年代には家庭の食卓にも定着してきました。その影響を受けて、当時、カットトマトやホールトマトの売り上げが伸長したといいます。

ただ、これらのトマト加工品から調理すると「煮込むのに時間がかかり、なかなか味が決まらない」といった意見が寄せられました。そんな声に応える形で生まれたのが、カゴメ基本のトマトソースでした。

圧力をかけてしっかりと高温で調理することで、コクを感じる香り成分が増え、家庭で長時間煮込んでも出せないコクを出すことに成功しました。

購入者からは、このトマトソースを使うと「『料理の8割の味が決まり、自分好みの味に調節できる2割の“余白”を残してくれる』といった言葉をいただきます」と、同社マーケティング本部・食品企画部の武田将彦さんは話します。

リピーターが多いのも、この製品の特長です。全国のスーパーの購買データを分析しているウレコンによると、カゴメ基本のトマトソースは910品もある「その他調味料」カテゴリーの中で、市場シェアは2位(集計期間:2017年11月1日~2018年1月31日)。リピート率で見ると、1位にランクインした調味料よりも2.73ポイント高い、18.48%です。

マーケティング本部・広告部宣伝グループの渡邊理絵さんは「3ヵ月に1回の頻度で購入していただいているリピーターの方が多いようです」と話します。

「トマトパッツァ」で売上高が急拡大

カゴメ基本のトマトソースは、ここ数年、過去最高の売り上げを記録し続けています。

発売された2002年当時、カゴメが生産するトマトソースだけでも5~6製品あり、基本のトマトソースはそのうちの1つに過ぎませんでした。16年の間に淘汰される製品が出てくる中で、消費者の支持を獲得し残ってきました。「16年かけて、トマトソースはこの製品に集約しました」(武田さん)。

売り上げは発売当初から緩やかに右肩上がりで成長。2011年こそ、東日本大震災で製品の供給が滞り、足踏みしたものの、その後は再び少しずつ売り上げを伸ばしてきました。そんな中、2016年に魚介をトマトで煮込む「トマトパッツァ」を提案したことで、前年比31%増と売り上げが大きく拡大します。

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トマトソースを使う料理といえば、パスタや鶏肉を使ったメニューが多い中で、魚を使ったメニューは「流通の評価が高かった」と武田さん。特に小売りの鮮魚部門の担当者がトマトパッツァを歓迎してくれたことで、普段はトマトソースの売り場でしか目に入らない製品を「鮮魚コーナーに置いてもらうことができ、魚との併買率が上がりました」と振り返ります。

好調な売れ行きが続くのは、トマトパッツァの成功によるものだけではありません。2016年に続いて2017年も前年比2%増の10.4億円と売上記録を更新した裏側には、野菜の価格高騰とトマトソースの意外な関係がありました。

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