はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回はプロのFPとして活躍する花輪陽子氏がお答えします。

40歳のシングルマザーで、中学3年生の娘が1人います。現在の貯蓄が80万円くらいです。子供が大学に進学する予定なので、今年から副業を始めて収入アップを見込んでいます。ただ会社には知られたくないと思っています。税金対策等はバイト先に協力してもらえるのですが、年収500万円以上になると、寡婦控除が対象外になりますよね。

バイトを始めた今年は、メインの会社に出す『給与所得者の扶養控除等(異動)申告書』の「寡婦」の項目にチェックして提出し、後に自分で確定申告行えば会社に知られずにいられますか。年収500万円は超えない方が良いでしょうか。ちなみに今年はつみたてNISAとiDeCoも少額から始める準備をしています。

〈相談者プロフィール〉
・居住形態:実家で両親と同居
・職業:会社員
・年収:460万円
・毎月の支出目安:16万円
・両親は定年退職後無職。両親と家計は別です。


花輪: 年収460万円で毎月の支出の目安が16万円ということですが、貯金額が80万円というのは、その割に少なく心配です。「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](平成29年)」によると、40代の平均は936万円(中央値30万円)です。

まずは支出管理の徹底で学費を用意

子供が高校に進学すると教育費がピークになります。大学受験や大学の初年度納入金などは大きいので、子供が大学に進学をする前に少なくとも費用の半分程度、200万円以上の貯金は現在の貯金とは別途欲しいです。

月の手取りが30万円程度だとしたら、月10万円程度貯めることも可能だと思います。母子家庭なのは大変ですが、使途不明金や特別支出が多くないか確認をしましょう。そうしたお金が多いようなら、月だけではなく年間で支出の予定を管理し、お金が出ていかないような仕組みづくりをするのが第一です。

収入を増やす努力をすることも良いですが、まずは支出のコントロールから。それが何よりも貯金への近道です。ポロポロお金がこぼれ落ちているうちは、収入を増やしてもよりこぼれ落ちる可能性もあるからです。

寡婦控除の要件を確認する

まずは寡婦控除の要件と、ご自分がどの要件に該当するかを確認しましょう。

税金に関する不明点は、税理士や所轄の税務署に問い合わせることをおすすめします。また、会社によって社内規則が異なるためにその確認も併せて行いましょう。

寡婦控除は、以下の1または2の条件に当てはまる人が受けられます。2の場合は、扶養親族などの要件はありません。

1.夫と死別し、もしくは離婚した後婚姻をしていない人、または夫の生死が明らかでない一定の人で、扶養親族がいる、または生計を一にする子(※)がいる人

2.夫と死別した後婚姻をしていない人、または夫の生死が明らかでない一定の人で、合計所得が500万円以下の人。※子は総所得金額等が38万円以下で、他の人の控除対象配偶者や扶養親族となっていない人に限られる。

一般の寡婦に該当する人が、次の3つの要件をすべて満たす場合は「特別の寡婦」に該当し、控除額が大きくなります。

1.夫と死別し、または離婚した後婚姻をしていない人、または夫の生死が明らかでない一定の人

2.扶養親族である子がいる人

3.合計所得金額が500万円以下であること

一般の寡婦の控除額は27万円、特別の寡婦の控除額は35万円です。

つみたてNISAとiDeCoは少額からスタート

つみたてNISAとiDeCoを少額でスタートさせるということですが、それ自体はとても良いことだと思います。

両制度とも税制の優遇が大きいからです。ただし、相談者の場合、子供の大学資金を作るのが先決です。3年以内に子供の大学資金が必要になるので、そうしたお金はリスクに晒さない方が良いでしょう。

iDeCoのデメリットとして、原則60歳まで引き出しができないということがあります。そのためiDeCoとは別に、子供の教育費の計算をして大学資金作りの邪魔をしない程度の少額から始めるようにしましょう。

つみたてNISAはいつでも売却できるので、iDeCoほどの縛りはありません。しかし、比較的近い将来に子供の大学進学があるので大きなリスクに晒すことはおすすめできません。個別株式に投資をするのではなく、分散投資されたETFや投資信託を選ぶなどの工夫も大切です。

また預金額が少ないので、まずは預金を増やす努力をしましょう。収入が多いのでちょっとした工夫で貯金を増やすことができるようになります。

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