はじめに

「イオン」「イオンリテール」を展開するイオンリテールは5月2日、翌3日から6日にかけて、本州と四国の約400店舗で過去最大の肉の祭典「ごち肉フェス」を開催すると発表しました。

期間中は、限定商品12品を含む最大20品目の肉と、関連商品を食肉売り場に取りそろえるといいます。一体どんな限定商品が用意されているのでしょうか。そして、この時期に肉フェスを開催するイオンの狙いは、どこにあるのでしょうか。


牛肉中心に限定商品が多数

今回のごち肉フェスで用意された12品目の限定商品。その中でも目玉といえそうなのが、1ポンド=約450グラムの分厚い状態で販売する米国産のリブロースステーキです。通常のサーロインよりも脂が多く、ジューシーな食感を味わえるのが特徴だといいます。

このほかにも、米国でよく見かけるTボーンステーキも、今回の企画に合わせて一部の店舗限定で用意しました。イオンリテールの釼持彰・畜産商品部長は「アメリカンバーベキューを意識した品ぞろえにしました」と語ります。

フェスで取り扱う20品目の肉のうち、7~8割が牛肉となっています。牛タンは一般的な薄切りのものだけでなく、食べ応えのある厚切りの商品も用意。家庭内での焼肉も念頭に置いて、人気の高い部位を集めた牛肉のセット商品も展開しています。

もちろん、牛肉以外にもフェス限定商品がそろっています。鶏肉はダッチオーブンで調理することを意識して、1羽丸ごとで提供。鴨やラムも骨付きの状態で販売します。「骨の周りからうまみが出ますし、バーベキューで焼きやすく、持ちやすいので人気です」(釼持部長)


牛肉以外にも、骨付きの鶏肉などバーベキュー向け食材を取りそろえ

また、フェス限定商品ではありませんが、豚肉のバックリブも期間中は前面に出して販売を強化するといいます。釼持部長は「一般的なスペアリブよりも脂肪が少なく、うまみが強い。米国ではスペアリブよりも人気です」と話します。

品ぞろえは店舗ごとの特性や売り場面積によって、若干異なるといいます。イオンリテールでは、今回のフェス期間中に肉全体で前年同期の20%増の売り上げを目指します。

なぜ初開催に踏み切ったのか

今年が初めての開催となる、ごち肉フェス。なぜイオンリテールは、この時期にこうした企画を催すのでしょうか。

企画の検討がスタートしたのは、昨年の暮れ頃。総務省の家計調査でも肉の消費が年々増加しており、赤身肉ブームによって、若い世代だけでなく、団塊世代でも肉食の傾向が強まっていることが背景にあったと、釼持部長は振り返ります。

また、ゴールデンウィーク期間中は、全国各地で肉フェスなどのイベントが開催され、多くの来場者を集めています。「こうした企画をウチでもできないか」。そんな議論もイオンリテールの社内で浮上したそうです。

釼持部長は「肉を食べるシーンが、家族が集まった時にみんなでシェアする方向に変わってきています」とも指摘します。GWはまさに肉の販売に打ってつけの時期であり、実際にイオンにおけるGW期間中の焼肉の売り上げは年間平均の2.5倍、肉全体でも同3割増となっています。

肉フェスに秘められたイオンの深謀

イオンリテールがこの時期に肉フェスを開催したのは、単にGWに肉の売り上げが伸びるから、という理由だけではありません。

家族が集まってみんなで肉をシェアして食べる、もう1つの時期は夏休みのある8月です。「GWに今回のような企画を仕掛けたうえで、もう1つのピークである8月の売り上げにうまく持っていきたいと考えています」(釼持部長)。

同社では、さらに仕掛けを張りめぐらせます。今回のフェスでは、肉だけでなく、バーベキューで使うトングや木炭、バーベキュー用のソースも、食肉売り場の近くに配置。肉とセットで購入してもらう狙いです。


トングや木炭など、バーベキュー関連商品も品ぞろえ

「肉をキーワードにすれば、肉周りの商品が展開しやすいです。バーベキューグッズを購入していただければ、せっかくグッズを買ったのだからと肉の需要も一段と盛り上がります」と釼持部長。また、魚のフェアだと肉が売れなくなりますが、バーベキューをテーマにすれば肉も魚も売れる、という事情もあるようです。

肉を入り口にして、食品全体の消費増につなげようというイオンリテールの深謀。はたして、その目論見はうまくいくのでしょうか。消費者にとっては、こうした取り組みが広がっていけば、普段は食べられない種類の肉料理を食べる機会が増えることになりそうです。

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