はじめに

朝ドラ、上から目線、がっつり、小悪魔、加齢臭、婚活、自撮り、無茶振り、アプリ、エコバッグ、サプライズ、スマホ、デトックス、パワースポット、リスペクト、レジェンド、マタニティーハラスメント――さて、これらの言葉に共通するポイントは何でしょうか?

今年1月13日、岩波書店は『広辞苑』の最新版となる第七版の発売を開始しました。前述の言葉は、その広辞苑・第七版で新たに採録された項目を一部抜粋したものです。

後ほど詳しく述べますが、広辞苑の新版が登場するのは「ほぼ10年に一度」のこと。ということは、以上で登場したキーワードは、ここ10年の間に世間に浸透したキーワードである(そのように編集部が判断したキーワードである)とも言えるのです。

さて、当然のことながら広辞苑には「経済用語」も載っています。ということは、第七版で新しく登場した経済用語を観察することによって、おおよそ最近10年間の経済動向を振り返ることも可能かもしれません。

今回は「広辞苑・第七版で新登場した経済用語」を特集しましょう。本稿はその前編です。


広辞苑の「新版事情」

本題の前に、広辞苑の「新版事情」について簡単に述べておきます。

広辞苑の初版が発行されたのは1955年(昭和30年)のこと。その最新版が、今年発売された第七版となります。

同辞書はここ最近、10年に一度、新版を販売するペースを維持しています。例えば第五版は1998年、第六版は2008年、今回の第七版は2018年の発行となっています。

ということは、冒頭で紹介した婚活、パワースポット、レジェンドなどの新規項目は、ここ10年ぐらいの間に世間に浸透したキーワードと捉えることもできるわけです。

とはいえ広辞苑は、新語の採録に慎重な態度でも知られます。例えばおたく用語のひとつに「萌え」という言葉がありますが、広辞苑はこの言葉を第七版でようやく採用しました。おたく文化に限って言えば1990年代から使用実態があり、『現代用語の基礎知識』(自由国民社)でも2004年版(2003年末発売)で登場している言葉なのですが、広辞苑では2008年の第六版で採用を見送り、2018年の第七版でようやく採用に踏み切ったのです。

つまり広辞苑の新版で採用される言葉には、その慎重さの分だけ「世間に十分浸透した」「これからも使われそうである」との判断も伴っているわけです。

投資の言葉「外国為替証拠金取引」

では本題です。広辞苑の第七版で新登場した経済用語には、どんなものがあるのでしょうか? 最初に注目したいのが投資関連のキーワードです。

広辞苑・第七版では、投資分野から「外国為替証拠金取引」が新登場しています。いわゆる「FX」(foreign exchange)のことです。その解説には「証拠金(保証金)を業者に預託し、売買の決済を差金によって行う外国通貨取引。売買額に比して極めて少ない証拠金で取引できる。FX」とありました。

個人的にFXに対しては「もっと古くから話題になった言葉」との印象も持っていました。日本でFXの取り扱いが始まったのが1998年だったからです(この年、改正外為法の施行による規制緩和が行われた)。ただ2000年代のうちは、詐欺的取引などのトラブルも多かったうえ、顧客保護のために規制も強化されるなど、同取引を取り巻く環境が流動的だったことも事実です。2008年発行の第六版では、採用の見送りが妥当だったかもしれません。

ちなみに、2014年導入の少額投資非課税制度「NISA」(ニーサ)は第七版の項目にはなっていません。これは同制度が、現状では2023年までの期間限定制度であることが関係しているのでしょう。制度の恒久化を求める声も大きいようですが、第八版が出るであろう2028年、この制度はどう変化しているのでしょうか?

一方、投資の基本用語のひとつで、資産や財産などを意味する「アセット」(asset)も未掲載でした。アセットマネジメント(資産管理)やアセットアロケーション(資産配分)などの用語がそこそこ認知度を高めている現状を思うと、そろそろ掲載を検討してもよいようにも感じているところです。

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