はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は横山光昭氏がお答えします。

夫が失業してしまいました。夫の失業中は失業手当で生活することになりますが、現在、社会保険料などが自己負担になっており、生活は厳しい状況です。夫の現役時の収入(額面35万円、手取り28万円ほど)よりも、手取りが10万円以上少なくなっています。


夫はすぐにでも仕事を見つけたいと言いますが、年齢的にも厳しく、なかなか見つけることができません。私自身はパートで働いており、職場で相談したところ、勤務時間を長くしたり、正社員として登用することで、働き方を変えることができると言われました。もう50代なので老後が心配です。何かできることはあるでしょうか。


〈相談者プロフィール〉
・女性、52歳、既婚(夫:56歳・失業中)、子ども2人は独立
・職業:パート
・手取りの世帯月収:27.6万円
 夫:17.4万円(失業手当、残り230日ほど支給される見込み)
 妻:10.2万円
・預貯金額合計:420万円
・夫の退職金:1,200万円(これから入る予定)


【支出の内訳(36.1万円)】
・住居費(ローン):9.2万円
・食費:6.1万円
・水道光熱費:2.2万円
・その他生活費:12万円
・健康保険料(協会けんぽの任意継続):約3.2万円
・国民年金保険料:3.4万円


横山: 収入が下がると、生活の仕方も変わりますので、対策が必要ですね。

相談者さんのご主人の場合は会社都合での失業のようですから、失業手当がすぐに出ているのですね。勤務期間も10年以上20年未満と比較的長いので、支給期間が270日になるようです。

意外と大きい社会保険料の負担

会社の職員でなくなると、社会保険料の負担は急激に大きくなります。まず、給与天引きではなく、自分で支払わなくてはいけません。金額はそう変わらなくても、手取り額をすべて生活費などに使えるわけではないので負担感が大きくなりがちです。

退職時にはよく、国民健康保険にすべきか、社会保険の任意継続を使うべきかと悩むことが多いものです。

国民健康保険は前年の年収と家族人数から金額を決めていくことになります。任意継続の場合は事業主負担がなくなるので、全額自己負担になりますから、おおむね支払額は給与天引きの2倍と考えましょう。

任意継続の保険料には上限があり(協会けんぽの場合)、標準報酬月額が28万円を超える場合は、28万円の標準報酬月額により計算した保険料になります。相談者さんのご主人の標準報酬月額は35万円ほど見込めますから、現状の健康保険料で済んでいます。

一方、国民健康保険に加入すると、年収500万円ほどの人の場合はご夫婦で月額約4.4万円となりますから、負担が増してしまいます。

ただ、任意継続が利用できる期間は退職後2年間と決まっています。この間に、国民健康保険に加入するのか、再び働いて会社の健康保険に加入するのか決める必要があります。

状況に応じて世帯主の変更も

ご主人の次の仕事がなかなかな見つからない状況で、相談者さんが正社員になり増収が見込めるというのであれば、相談者さんが主たる生計維持者となり、ご主人を扶養するということも可能です。そうすると、社会保険料は給与天引きになり、ご主人の分が別途かかるということもないので、家計の負担感は少なくなるでしょう。

パートのまま、勤務時間を増やし、収入を上げて社会保険に加入させてもらうということもできるでしょうが、雇われ方が不安定ですと同じような心配が再度起こりうるので、可能であれば正社員になりたいものです。

会社の待遇や今後の収入の見込みを確認してみましょう。特に年金に関しては、国民年金だけでいるよりも厚生年金に加入している期間を長くしたほうが、もらえる年金額が多くなります。

年金は3階建ての構造でできており、1階部分が国民年金部分。会社に勤めている人は、定額部分というところになります。会社に勤めている人はさらに厚生年金が2階部分にあり、ここは給与の額に応じて金額が決まる比例報酬部分です。その分、国民年金だけの人よりも多く年金がもらえます。3階は、主に私的年金部分となります。

ご主人の再就職も大切ですが、将来を見据え総合的に考えてみましょう。

現在の収入で生活維持できるよう生活費の圧縮を

今はまず、貯蓄を食いつぶさないよう生活費を圧縮することを考えましょう。

今後、ご主人の失業手当が切れるのに収入の当てがないという可能性もありますし、奥さんが生計維持者、ご主人はパート・アルバイトという形になる可能性もあります。いつ生活費不足になっても困らないように、もともとかかる生活費を少なくする習慣をつけておくべきなのです。

もし、運よく、必要生活費以上の収入を得られるようであれば、老後資金の蓄えを増やしていくこともできます。

急な不運でしたが、悲観せず、よりよくなる方法を考えて乗り越えてほしいと思います。

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