はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は花輪陽子氏がお答えします。

東京で長く一人暮らしをしておりましたが、体調を崩し仕事が続けられなくなり、マンションを売却して実家に戻りました。実家の父は医師で月収100万円程度、妹は会社員で月収30万円程度、母は専業主婦です。食費や光熱費など実家の世話になっていますが、父は高齢でいつまで仕事ができるかわかりません。仕事をしなくてはと思うのですが、体調が戻らず、いつ再開できるようになるかが不透明です。

東京のマンションを売却した際にできた800万円の貯蓄があり、そこから毎月の生活費を切り崩している状態です。このままではいずれ立ち行かなくなってしまいます。800万円の資産をもとに、生活費や老後の資金などを作り出す方法はないでしょうか。

〈相談者プロフィール〉
・女性、37歳、未婚
・職業:無職
・居住形態:実家(持ち家)
・手取りの世帯月収:0円
・毎月の支出目安:15万円
・総資産:800万円


花輪: ご相談ありがとうございます。

800万では当面の生活費にしかならない

資産800万円をもとに、生活費や老後の資産を作り出す方法ということですが、800万円は当面の生活費(生活費にもよりますが、2~3年分)にはなりますが、現在37歳の相談者の老後のお金までカバーするのは難しいでしょう。

しばらくはゆっくりと静養をして、その後に無理のない範囲で働くことを考える方が現実的です。

なぜなら、現在、日本は日銀の異次元緩和によって、超低金利で銀行預金の金利も限りなくゼロに近く、高い利回りで運用するには株式などに投資をしてリスクをとることになるからです。

優先順位をつけてお金を4つに分ける

米国の証券業界で注目を集めた資産運用の手法を解説した『ゴールベース資産管理入門』(日本経済新聞出版社)によると、目的ごとにお金を区別し、優先順位を付ける必要があるとして「お金を配分するための4つのポケット」を紹介しています。

1.安全: 元本を保全し、ポートフォリオ全体のボラティリティを減らす。
2.インカム: ボラティリティを限定しながら、キャッシュフローを作り出す。
3.戦略: ボラティリティを管理しながら、増やす機会をうかがう。
4.積み上げ: 将来の購買力増大という目的のために、大きなボラティリティを許容し資産の上昇を狙う。

つまり、「1.安全」 は緊急時の資金や半年分の生活費であって、預貯金などで確保すべきです。相談者にとって、800万円は安全を確保する資産なので、高いリスクをとるべきではないでしょう。

「2.インカム」 は給与、公的年金、個人年金、債券、不動産などからキャッシュフローを作り出すということになります。100歳まで生きると仮定すると、相談者はこれから63年もの人生があると考えられます。なんとか手段を考えてインカムを作っていくしかありません。

「3.戦略」 に関しては、アセットアロケーションをしてポートフォリオを組んで資産運用をし、引退後の資金の確保を目指します。インカムができて、そこから余裕資金を確保できるようになったら、ポートフォリオを組んで老後資金を作りましょう。

「4.積み上げ」 に関しては、ハイリスクハイリターンで資産の増加を狙うということです。仮想通貨、クラウドファンディングは、積み上げに当たるでしょう。積み上げは、「1.安全」から「3.戦略」のベースがあった上で、余剰資金の一部を使って、さらなる生活レベルの向上を目指すために行う投機に当たります。

生活費を絞って、まずは体調回復に専念

体調が悪く働けないということで不安はあるものの、当面の間は実家でお世話になり、その間にいかに800万円を取り崩さないように生活費を絞れるかに注力しましょう。

数年間静養できたら、フリーランスなどでもよいですし、無理のない範囲で収入を確保できるようになるとよいですね。まずは、先の不安を気にし過ぎず、体調を回復させることに専念してください。

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