はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は花輪陽子氏がお答えします。

今年、新社会人になりました。社会人になったことをきっかけに、一人暮らしを開始し、お金の管理も自分でやるようになりました。今までは実家暮らしだったので、収入のすべてをお小遣いのような感覚で使っていたため、自分が生きていくためにお金を使う感覚にまだ慣れず戸惑っています。ただ、今後は結婚などのイベントに備えて、貯蓄をしていきたいと思っています。心構えとして、大体手取りの何割をどのようなかたちで貯めていけばいいのでしょうか。また、参考になるデータなどがあれば教えてください。これから苦労しながらお金を稼いでいくことになるので、後悔をしたくないと思っています。どうかアドバイスをお願いします!


〈相談者プロフィール〉
・女性、23歳、未婚
・職業:公務員
・居住形態:賃貸(家賃補助があり、持ち出しは月3万円)
・手取りの世帯月収:15万円
・毎月の支出目安:まだ安定していないため具体的な提示が難しい状況です。


花輪: 社会人1年目は、最初の1ヵ月はお給料が満額もらえない、ボーナスも少なめの金額ということも多く、収入が安定しないものです。また、2年目の6月からは住民税も天引きされることが多いので、手取りが減ってしまったということもあるようです。そのため、こうした事情を考慮しながら、手取りが変動しても慌てないようにしたいものです。

また、初めての一人暮らしということで、光熱費の目安などもなかなか掴みにくいでしょう。家計簿をつけて、まずは支出の把握から。光熱水道費、携帯電話などの通信費、クレジットカードなどの明細類にしっかり目を通しましょう。

一人暮らしの支出のベストバランス

一人暮らしの支出のベストバランスは、手取り月収に対して下記のような割合で考えてみてください。

[月収に対しての各費目の割合]
住居費:30%
交通・通信費:10%
水道・光熱費:4%
保険料:1%
食費・生活用品:15%
娯楽費:15%
貯金・投資:25%

「貯金・投資」に25%、「娯楽費(ファッション・美容・交際費・趣味・旅行など)」に15%、「生活にかかるお金」に60%程度と、まずは大きなポイントをおさえましょう。

一人暮らしだと実家暮らしのように貯金ができないものです。しかし、貯金がないと病気や失業をした時にお金に困ってしまいます。また、アルバイト・パートタイム、派遣社員、フリーランスの場合は、年齢の経過とともに体力が衰え、若い頃ほど稼げなくなる心配もあります。まずは月1万円からでもよいので、将来に備えて貯めるようにしましょう。

生活費のなかでは、家賃割合に注意しましょう。家賃はどんなに多くても、手取り月収の30%までに留めないと生活が苦しくなります。お部屋探しの前に、賃貸サイトで周辺の住宅と条件(駅からの距離、築年数、間取り、周辺環境や日照など)を比べて、相場を調べることも重要です。

地方在住で車が必須なら家賃の割合を下げて

地方にお住まいの場合は、自動車が必須アイテムになりますね。自動車維持費の分、家賃の割合を20~25%など低めに予算立てしましょう。ガソリン代に月1万円程度、自動車保険や税金などもかかりますから、自動車維持費には5~10%程度みておきます。

自動車を購入する際には燃費にも注目をしましょう。たとえば、1年間に約1万キロを走る場合、ガソリン代を150円/Lと仮定すると18km/Lの自動車の場合ガソリン代は8万3,333円です。23km/Lの自動車の場合は6万5,217円と、年間1万8,116円変わります。ガソリン代だけではなく、税金や保険料などの維持費も比較して、コスパのよい自動車を選ぶことが大切です。

“お楽しみの支出”で今を楽しむことも大切

シングルの場合、保険は自分の医療を中心に考えて。公的保障の健康保険や自分の貯金に加えて、貯金が少ない人は幅広い病気をカバーする医療保険があると安心です。2,000円程度で加入できる都道府県民共済や、ネット生保の医療保険が安価でおすすめです。

“お楽しみの支出”は各自が好きなようにバランス配分して大丈夫です。また、譲れない趣味がある場合は、食費から外食費を削ってお楽しみに回しても。

理想のバランスはあくまでも目安に過ぎません。自分が稼いだお金ですから、貯金や家賃割合など大きなポイントを抑えたら、あとは自由に使っても大丈夫。将来に備えつつも、今を楽しむことも大切です。自分らしい予算配分を立てられるようにしましょう。

1年目のボーナスは全額貯金、2年目からは…

貯めるためのコツとしては、最初は手取り月収の10%からでもよいので、給与から天引きで貯金をしていきましょう。具体的には銀行の積立定期預金などで貯める口座を分けてください。

また、ボーナスはできれば全額貯めるようにして、臨時支出に対応できるようにしましょう。最初の1年間は、思わぬ出費が発生する可能性が高いからです。1年経過して、臨時支出などのおおよその目安がついてきたら、ボーナスの一部をご褒美に回してもよいでしょう。

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