はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は花輪陽子氏がお答えします。

新車の購入資金を、普通預金で賄うことができない場合の手段として、定期預金の解約、株の売却、投信の売却、金およびプラチナの売却等を検討しています。上記手段の望ましい優先順序を教えてください。


普通預金はほとんどありません。満期を迎えた定期預金が約150万円、定額預金が約150万円あります。なお、負債はありません。その他、一般財形貯蓄が約1,000万円あるので、ローンを組む必要はないのですが、せっかく貯めた安全資産の一部を使うことに不安を感じてしまいます。また、株や投信もこれから増やしていくことを考えると、目減りをさせたくない気持ちが沸いてくるのです。とはいえ、田舎のため、車は必需品で、高い買い物も定期収入があるうちにと、妻にせっつかれています。


〈相談者プロフィール〉
男性、50代後半、既婚、子ども2人


花輪: 自動車などライフプラン支出を賄うためには、どの資産クラスから換金をすればよいのでしょうか。

結論を言えば、株、投信、金およびプラチナなどの投資資金は、必要になったらいつでも換金をしてもよいでしょう。

景気のサイクルに伴って、株式の上下があるので一部を換金しておくのも手です。ただし、その投資商品を今後も買い足したいという場合は、定期預金から使うことを考えてもよいでしょう。

普通預金に3〜6ヵ月分の生活費が理想

理想的には普通預金には3〜6ヵ月分の生活費を置いておきたいですね。お金は普段から、目的に合わせて資産を3つのカテゴリーに分けて置き場を作ることをおすすめします。

3つのカテゴリーとは、「すぐに使えるお金」「貯めるお金」「殖やすお金」です。

臨時支出に対応させる「すぐに使えるお金」

まずは、万一の生活費として「すぐに使えるお金」を備えておく必要があります。

手元に現金、預金をいくら残しておくかは、年齢や収入の安定度合いによって異なりますが、会社員の場合は最低でも月収の3ヵ月分、自営業者の場合は最低でも6ヵ月分は残しておくと安心なのです。

このお金があれば、いざという時に投資資金を換金せずに臨時支出に対応可能です。

自動車費用は「貯めるお金」で

「貯めるお金」とは、1~2年以内に使用するお金です。自動車費用や教育費がこれに該当します。

「貯めるお金」は定期預金や期間の短い債券、個人向け国債などで運用すると良いでしょう。貯蓄性の高い保険は早期解約をすると解約返戻金が少ない場合が多いので、容易に解約できる商品がおすすめです。

また、個人向け国債とは、国が毎月発行する個人限定の商品で、国が元本を保証しているために一企業の債券と比べると安心感があります。「変動10年」「固定5年」「固定3年」と3種類がありますが、インフレに強いのは変動金利型の10年物の個人向け国債です。変動金利型の場合、金利は半年ごとに見直されます。

個人向け国債が非常に有利なところは、発行から1年経過すれば、国が額面金額で買い取ってくれるということです(直前2回分の利子相当額が差し引かれます)。つまり、途中で解約をしても、原則的に元本が割れないということです。

これが、普通の国債(利付国債)や事業債にはない強みです。通常の債券の場合だと、市場金利が上がれば、相対的に低い金利の債券を保有していると価格が下がってしまいます。そのため、途中売却をすると元本が割れる場合があるのです。

長期投資で「殖やすお金」

「殖やすお金」は当面使用予定のないお金です。老後資金の積み立てに充てるお金などが、これにあたります。株式、投資信託などに長期投資をして、お金を殖やすことを目指します。

このようにお金に色をつけて考えておくと、こんな時にどうしようという迷いから解放されるのではないでしょうか。

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