はじめに

街を歩いていて「最近、国際結婚のカップルを見る機会が増えた」という印象を持たれている方は多いのではないでしょうか。でも、国のデータをひも解くと、実はここ5年で国際結婚の比率は横ばいで推移、10年前と比べると低下していることがわかりました。

イメージと現実が乖離している理由は何なのでしょうか。過去20年の日本人の結婚事情の変化から、その根本原因を探ってみたいと思います。


国際結婚の割合は3%台で横ばい

厚生労働省のまとめた「人口動態統計」によると、日本国内で提出された婚姻届に占める国際結婚の比率は2016年が3.4%と、ここ6年は3%台で推移していることがわかります。2000年代前半は5%超の水準だったので、当時と比べると比率は低下しています。

2000年代前半に国際結婚の比率が一時的に急増した要因について、ニッセイ基礎研究所の天野馨南子研究員はこう解説します。

「2000年代前半は、バブル崩壊の影響で未婚者が急増した時期。経済的な自信の問題もあり、日本よりも所得の低い近隣アジア圏の女性と日本人男性とのカップルが増え、国際結婚の比率が一時的に高まりました」

ただ、その後は3%台まで比率が低下。20年前とほぼ同じ水準に落ち着いています。つまり、日本における近年の国際結婚の割合はほぼ3%台と見ることができそうです。

国籍の組み合わせに異変

一方で、この20年間で変化した要素もあります。1つが、国際結婚をしたカップルの国籍の組み合わせです。

人口動態統計によると、1996年に最も多かった組み合わせは「日本人夫とフィリピン人妻」で全体の23.4%。以下、「日本人夫と中国人妻」(22.1%)、「日本人夫と韓国・朝鮮人妻」(15.7%)、「日本人妻と韓国・朝鮮人夫」(9.9%)と続いていました。

これが2016年には、「日本人夫と中国人妻」(26.1%)、「日本人夫とフィリピン人妻」(15.9%)、「日本人夫とその他の国妻」(11.1%)、「日本人夫と韓国・朝鮮人妻」(9.6%)という並びに変わりました。

「日本人夫と中国人妻」「日本人夫とフィリピン人妻」という組み合わせがトップ2を占めている状況は同じです。一方で、「その他の国」の比率が急増しています。

直近では3番目に多い組み合わせだった「日本人夫とその他の国妻」は、20年前には全体の3.6%に過ぎませんでした。1996年には全体の6.0%で6位だった「日本人妻とその他の国夫」も、2016年には9.5%まで上昇し、日本人妻の組み合わせでは最もカップル数が多くなっています。

「その他の国」は、ドイツやフランスなど欧州圏の国が大半を占めるといいます。この比率が高まっていることが「国際結婚が増えている」とイメージしてしまう一因になっているのではないか、と天野研究員は指摘します。

「白人男性やこれまで見かけなかった人種の男性と日本人女性のカップルが増えたため、国際結婚が増えたように思えるのかもしれません。都市部への人口集中が起きていることから、過密化した中でこうした国際結婚のカップルを目にしやすくなったという要素もあります」

増加する日本人女性の国際結婚

20年間の比較でもう1つ顕著に変化しているのが、日本人妻カップルの比率です。2000年代前半には日本人男性の国際結婚と日本人女性のそれが8:2だったものが、日本人女性の国際結婚の比率が徐々に上昇し、直近では7:3に変わっています。

この背景について、天野研究員は「近年では日本人女性の経済力が上がってきており、選べる男性の幅が広がってきたため」と分析します。かつてであれば「経済力で劣る外国人男性を日本人女性が養う」という構図が成立しにくかったのですが、日本人男女の経済格差が縮小した結果、女性が経済面で家庭を支えるパターンが増加しているのです。

経済力の向上に伴って、女性側の結婚への価値観も大きく変わってきているようです。男性が思っているよりも「伝統的価値観における勝ち組男性がいい」と考える女性は少なくなっており、自分の学歴未満の学歴だったり、自分よりも年下だったり、国籍にはこだわらないという女性が増えてきているといいます。

国勢調査によると、50歳時点で結婚経験のない人の割合は、男性だと4人に1人、女性だと7人に1人となっています。こうした現状を変えていくためには、日本人女性と同じように日本人男性も結婚相手に対する価値観を多様にすべきだと、天野研究員は指摘します。

「国際結婚が実は増えていない」という意外な事実の裏側には、日本人の未婚率上昇を食い止めるためのヒントが隠されているようです。

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