はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は横山光昭氏がお答えします。

なかなか妻と価値観が合いません。結婚して3年が経ちますが、家計は夫婦別々です。食費や日用品は折半で、家賃は僕、水道光熱費は妻が負担しています。スマホ代や生命保険代は各自払いです。ですがそろそろ子どもが欲しいと思いますし、そうなると妻が産休育休で働けなくなる可能性があると思うので、家計を合わせておいたほうが良いのではないかと思うのです。
そして、生命保険やお金の使い方を見直して将来に向けて貯蓄をしたいと考えているのですが、こういうことを妻にも話してもなかなか良い反応がありません。
自分の収入を知られたくないのかもしれないですが、よく洋服などを購入しているし、お金を使いすぎているのではないかなど、余計なことまで心配になってしまいます。
どうすると妻と共通な目標を持ち、お金を貯めていけるでしょうか。
(Dさん 35歳 会社員)


横山: ご質問ありがとうございます。

夫婦別財布は「たまらない家計」の代名詞

奥さんから「夫の収入がわからない、家計を合わせるべきだと思うのに、協力してくれない」という相談は多いのですが、男性からの相談は珍しいですね。

最近は共働きが増え、夫婦が別々の財布で暮らしているご家庭が増えています。同棲しているときのように、生活費は折半。もしくは、家賃は男性、食費は女性というように支払う費目で分担し、出し合って暮らしているご夫婦が「貯蓄ができるようになりたい」と思って家計相談に来られることが、とても多くなりました。

この「夫婦別に家計を管理する方法」は、互いの仕事や収入を尊重した暮らし方をしているように見えるかもしれません。ですが実は、お金が貯まらないというご夫婦に多い家計管理方法でもあるのです。

互いに自由に使える金額が多いと、重複する買い物をすることもあるでしょうし、「自分がお金を貯めていなくても、相手が貯めているだろう」などという気持ちが起こり、浪費しやすくなることもあります。ですから、夫婦別財布は、お金が貯まらない家計の代名詞になるとも言えるでしょう。

大切なのは「会話」

家族と一緒にお金を上手に使っていくには「会話する」ことが大切です。仕事でもそうですよね。活字で伝えたと思っても、その仕事に対する意気込みとか、重要性とか、うまく伝わっていないことがあります。そうすると、同じ方向に向かって仕事を進めているはずなのに、少しずつチグハグしてきてしまう、それと同じです。

でも、会話をしっかりしてその仕事に対する思いとか、熱量を同じにしてきた人とは、目標をしっかり同じに持ち、進んでいけます。家庭のお金に対しても同じことが言えるのです。

家計管理を別にしていると、共通の思いや価値観ができあがらないのと同時に、思いがけないトラブルが起こっていても気が付けないことがあります。例えば、借金ができてしまっていたとか、貯蓄が何もなかったとか、そういうことがあるときまでまったく気がつけないのです。

そのあるときとは、子どもができたとき、住宅ローンを組もうと思ったとき、収入が1馬力となるときなどです。こういうことが後からわかってしまうと、今までパートナーとして期待していた分、大きく落胆してしまいます。こういう事態は、ぜひとも避けたいものです。

まず、ご夫婦なのに、お互いの給料を知らないとか、貯蓄を知らない、借金していることも知らないなんて、水臭いではないですか。生涯を共にするパートナーなのですから、何事もオープンであたりまえという気構えでいましょう。

家族マネー会議がおすすめ

相手の収入やお金の使い方、貯蓄額も知らないというご夫婦に私がよくおすすめするのは、家族でお金の話がしやすくなる「家族マネー会議」です。

はじめはやりにくさもあるでしょうし「嫌だなあ」と思うこともあるでしょうが、少しずつ、可能な範囲でお金の話をしてみましょう。途中、生活の話や最近のことを話してもOKです。緊張せず、いつもの会話をするような雰囲気でできるといいですね。実行するのは、給料日後の家族が集まれる日です。

話す内容は、収入、支出、貯蓄額など。家電といった買い足したいものなどは、このときに申請します。家族の同意が得られれば、購入できるという段取りです。参加は家族全員。お子さんがいれば、お子さんも含め一緒に話し合いましょう。そして、支出をした理由が「“欲しい”なのか、“必要”なのか」を検討します。繰り返していくと、ご家庭の中で共通の価値観ができあがってきます。

我が家でも、この家族会議を取り入れています。子ども6人と私たち夫婦でお金の話をするのですが、子どもは自由な発想でお金の使い方を話しますが、次第に「買って良いもの、買わなくて良いもの」の判断力がついてくるのがわかります。そんな様子を見ている私たち大人には、良い勉強になります。

Dさんはご夫婦の話でしたので、子どもがどうのという話は、今は関係ないかもしれませんが、それだけ「話をする」ということに意味があるということの例とお考えください。ご夫婦で、ぜひ、マネー会議をしてみてください。お金の流れが変わってくるはずです。

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