はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は深野康彦氏がお答えします。

40代後半になり、そろそろ老後のことが気になり始めました。今からなにをしておくべきか教えてください。現在、私はフリーランスで収入は手取り月50万円程度。大学3年生の子供が1人いますが、学費はすでに準備してあります。住まいは家賃15万円の賃貸で、毎月の生活費は20万円ほどです。保険、年金はありません。


【現在の資産状況】
国内バランス型投資信託:90万円
宝くじ付き定期預金:1,000万円
1週間満期定期預金:1,000万円
定期預金(10年型):360万円
普通預金:230万円
毎月積み立て投資信託(バランス型):5万円(計35万円)
息子名義:1万円(計6万円)
実家資産:1,000万円を贈与予定


過去に株式投資で500万円を減らしてしまい、「もう減らすような投資はしない」と考え、定期預金をメインにしてきました。
(40代後半 独身・子供1人 女性)


深野: 老後を迎えるにあたってなにをしておくべきかについてのご質問ですが、今後のライフプランなどご不明な点が多いことから、いただいているデータから回答させていただきます。

国民年金は加入10年で受給可能に

気になるのが、「保険、年金はありません」と書かれている“年金なし”の部分です。フリーランスでお仕事をされていることから国民年金に加入する必要がありますが、もし「国民年金に加入していない=国民年金保険料を収めていない」と捉えてよいのであれば、まずは国民年金に加入すべきです。

かつて、国民年金は25年間の加入期間がなければ受給権が発生しませんでしたが、法改正によって現在では、加入期間が10年あれば年金を受け取れるようになりました。

また、国民年金保険料は所得から全額控除することができるので、課税所得を減らすことができて節税にもなります。

過去に株式投資で失敗をした経験があることから、あまりリスクを取りたくないという様子が質問から読み取れます。所得控除が利用できる制度に加入し、節税を行うことで、リスクを取らずに収益をアップさせることができます。

上乗せ年金で、さらに節税を

そうではなく現在、国民年金に加入しているならば、上乗せ年金として「国民年金基金」か「小規模企業共済」に加入されるとよいでしょう。

国民年金基金は年間最高81万6,000円(月6万8,000円)、小規模企業共済は年間最高84万円(月7万円)まで掛け金を選ぶことができます。

ともに全額所得控除ができるため、収入に対する所得税率が10%であれば年間掛け金の10%、同所得税率が20%であれば年間掛け金の20%が節税になるのです。

60歳までの加入であっても、かなりの節税効果を得ることができるでしょう。

いずれも自分が拠出した掛け金は、将来自分の年金として戻ってきます。国民年金のような相互扶助という運営形態ではありません。

資産運用については、今後、緩やかながらも物価上昇が続くと考えられるので、対応するために積立投資信託の額をもう少し増やしてもよいかと思われます。

現在、積み立てられているバランス型投資信託を増額、もしくは円安に備えることなどを意識して外国債券型の投資信託を選ぶのもよいでしょう。もし再度、株式に投資してもいいと思えるのでしたら、海外株式型の投資信託を新たに積み立てるという選択肢もあります。

親からの贈与はタイミングと金額に注意

ほか、ご質問から気になったのは「実家資産1,000万円を贈与予定」と記載されている点です。1,000万円を一括して贈与されると、贈与税が230万円前後かかることになります。

非課税の範囲内(年間110万円)で贈与を行うなど、多額の贈与税を負担することがないかたちで実行できるようにしていただきたいと思います。

また、現在のお住まいは賃貸ですが、老後はどうされるのでしょうか? 全国に空き家が増えていることから、老後も住まいを借りることは可能でしょうが、収入が減る分、住居費の負担はかなりのものになります。

仕事を完全リタイアするまでに、なるべくたくさんの資産を準備しておくべきでしょう。状況によりますが、どこかで家を購入することを考えてもよいかもしれません。

現在、負債を抱えていらっしゃらないのですから、将来のために資産残高を増やすことに励まれてください。

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