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2017.08.5

証券会社の“言いなり投資”から義父の資産を守るには?

FPの家計相談シリーズ

証券会社の“言いなり投資”から義父の資産を守るには?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は野瀬大樹氏がお答えします。


義父は80歳を超えていますが、資産運用に積極的です。資産に十分な余裕があるようなので、別にかまわないのかもしれませんが、ほとんど証券会社のいいなりに売り買いしているようです。「NISAをしないと損だ」と、よくわからない株を買って、結局値を下げたり……。

高齢者の資産管理はどのようにすればよいのでしょうか。ちなみに義父の子供である私の主人は亡くなっており、相続人になりうるのは義母と孫二人です。
(50代 既婚・子供2人 女性)

野瀬:高齢者の資産管理についての問い合わせは、少なくありません。

その問い合わせの多くは、高齢者自身からというよりは、その息子さんや娘さんからの問い合わせです。

将来的な遺産を見越して、その遺産額が減るのではというご心配のようです。

高齢者は「増やす」より「減らさない」が大切

単に数字だけで考えると、高齢者、特に十分な年金を貰っている80代以上の人の場合、積極的な投資をする必要性はまったくありません。

株や投資信託よりも、生活や医療費として必要なときにすぐに使える預金のほうが用途にあっていますし、老後資金である以上気をつけるべきは「増やす」ではなく「減らさない」だからです。

結論からお話すると、基本的には8割程度は定期預金で、あとは残りの金額で個人の趣味に応じて投資信託を少し運用するぐらいでよいと思います。

ちなみに、私の親戚のおばあちゃんは、100歳で亡くなるまで投資が大好きでしたが、毎日配当利回りや投資した会社の業績を気にし続けていたので、亡くなるまでずーっと頭脳明晰でした(笑)。

投資が好きな人であれば「趣味」として投資を行うことは悪くないと思います。ただ、積極的過ぎるのは少し問題だと思うので、その比率については一度、お義母さんを通してアドバイスするとよいかもしれませんね。

質問者の方がいうとカドが立つことも、お義母さんからであれば、すんなり聞いてもらえると思います。

さらに投資ではなく預金の形で持っていたほうが、そのときそのときの金額が明確にわかりますし、金額に応じた将来の相続対策が立てやすいです。

加えると、お孫さんがおられるとお伺いしておりますので、「教育資金の非課税制度」(注)を使うのもよいでしょう。教育資金目的であれば、1,500万円までの贈与が非課税になる制度です。こちらも、預金の形で持っているからこそ取れる手段です。

(注)教育資金非課税制度

ただし、高齢者の資産運用についてまわりが口を出す場合、理論的にはこれがよいとわかっていても、なかなかうまく伝わらないのも事実です。

高齢者の“言いなり投資”がNGと言い切れない理由

私は個人的な経験から、十分に資産がある高齢者に、高度な資産運用を勧める人や会社があまり好きではありません。

数年前に亡くなられた方ですが、私に非常に親切にしてくれた90代の女性が一人いました。

そして、その彼女に新興国に投資をさせたり、仕組債の購入を勧めて、実際に契約をさせている証券会社がありました。

彼女は十分な資産を持っていたので、私自身、その証券会社の支店にも抗議していたのですが、支店長は「本人が買いたいと言っているものを止めることはできない」の一点張りでドンドン彼女に購入させていました。

彼女と話していても、投資商品についてはまったく理解しておらず、質問者の方のお義父様と同様に「ただ勧められるまま」数百万単位でポンポンと投資商品を買い続けている状態でした。

当初、私はそのことに対して憤っており、その証券会社の本店まで行って抗議しようかと思っていたのですが、彼女と話し込むうちに、だんだん、この問題はそんなに単純な話ではないということに気づきました。

彼女には、息子も孫もいたのですが、遠方に住んでいたこともあり、1年のうち会えるのは1回程度。90歳を超えても一人暮らしをしていました。

家族からの電話はほとんどなく、近所の商店街で買い物するときのやりとりが楽しみだったようです。

一方、証券会社の営業マンは、歳は20代と、彼女から見れば孫より若い年齢なのですが、彼女は最後の最後までその担当者のことを「本当に今時珍しいいい子だ」と褒めちぎっていました。

その営業マンの彼は、足しげく彼女の家に通い、一緒にお菓子を食べて世間話の相手になってくれていたようです。

もちろん、彼の頭の中で一番大きなウェイトを占めていたのは営業ノルマだったとは思いますし、その意味では「金のため」に親切にしていたといえると思います。

しかし、この関係で一体誰が不幸になっているのでしょうか?

営業マンは営業成績があがり、もちろんハッピーです。

一方、彼女のほうも、投資商品を買わされているからといって、老後の生活が破たんするほどのことをしているわけでもありません。

確かに数百万、数千万を投資商品の購入には充てていますが、ゼロになっているわけでもないからです。預金もまだ十分にあります。

唯一ハッピーでないのは、このケースの場合、「将来の遺産の受取人」だけだったのです。

そう考えると、彼女はその数千万で、90代の寂しい一人暮らし生活の話し相手を買っていたと考えることもできると思うのです。

彼女はその営業マンのおかげで、寂しい時間を埋めることができていたと考えると、完全に悪いことともいえないなあと思ったのです。(それだとしても、新興国国債を買わせるのはどうかと思いますが………)

家族間のコミュニケーションを見直す

質問者の方の場合が、この私の経験と一致するとは限りませんが、ここから得られる教訓というものもあると思います。

それはまず「家族間のコミュニケーションを密に取る」ことだと思います。例えば、今までよりも頻繁にお孫さんと一緒に義父の家に遊びに行ってはいかがでしょうか。

そうすることで、お義父さんも寂しさが紛れて、証券会社の営業マンと会う必要もなくなるかもしれません。

そういったコミュニケーションの中で、先ほどお話しした「教育資金非課税制度」の話が、ふと出ることもあるでしょう。

80歳の男性であれば正直、お孫さんと会える時間はもうあまり残されていないと思います。

もうご主人はおられないとのことですので、難しい点もあるとは思いますが、さまざまな季節の行事のおりに、お孫さんを連れてご挨拶におうかがいすることを嫌がるおじいさん、おばあさんはいないと思います。

お義父さんの素晴らしい老後のためにも、「家族間のコミュニケーション」について考えてみてはいかがでしょうか?

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