• >
  • >
  • 兄弟が大揉め「相続」をややこしくする“青山の家”
2017.12.3

兄弟が大揉め「相続」をややこしくする“青山の家”

FPの家計相談シリーズ

兄弟が大揉め「相続」をややこしくする“青山の家”

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は野瀬大樹氏がお答えします。


30歳を過ぎた頃から、よく親と複数所持している不動産相続の話になります。調べたり本を読んだりしていますが、いまいちわからず、結局手つかずの状態で時間だけが経ちました。兄が実家近くでひとり暮らしをしていますが、現在、兄弟はそれぞれ別の仕事をしています。「副業で不動産管理会社を運営するとよいのか?」など検討していますが、相続税に関する法律がよく変わるらしいので、どうしたらいいのか、わからずにいます。

今からしておかなければいけないこととして、具体的になにがありますか? また今後、注目すべき情報にどんなものがあるのか教えていただけるとうれしいです。
(30代後半 既婚 男性)

野瀬:私の日本の住まいは京都にあるのですが、以前、京都で老舗会社の社長の講演を聞いた際、相続について話しておられました。

「私も通常だと“とんでもない相続”が発生するはずなんですが、親の存命中に莫大な借金をして、京都のあちこちにマンションを建てましてね。それで相続税の支払いをべらぼうに下げることに成功したんですわ」

直前まで「京都の伝統文化を大切にせな、あかん!」とおっしゃっていたのに、いきなり「京都中にマンションを建てまくった」という真逆の話になったのはさておき、この「マンション購入による相続税の圧縮」はよく聞く話です。

マンション購入は相続対策になる?

では、「マンション買いまくり・建てまくり相続対策」は本当にお得なのでしょうか?

結論からいうと、あまりおすすめできません。

簡単にいいますと、これは「1,000万円で買った不動産も、相続のときは1,000万円よりずっと低い金額で評価される」という性質を活かした相続税対策です。

以前は、不動産の価値も下がりにくく、相続後に1,000万円近い金額で売ったり、それを人に貸して家賃収入を得たりすることができました。

でも今は、よほどの一等地でもなければ値段は下がっていきますし、貸そうと思っても家賃を引き下げないと借り手が見つかりません。

相続税は安くなっても、その分、相続財産がどんどん目減りしていくイメージです。

これでは実質的な相続対策にはなりませんね。将来売れる・貸せる見通しがつく場合のみに使える方法のようです。

また相談者の方のように、相続のために不動産を買うのではなく、もともと不動産を持っている人の場合は法人化する手法もあるので、そのあたりに少し触れていきたいと思います。

必要なのは遺言書ではなく「納得」

まず、相続そのものではなく準備のお話です。

親に万一のことがある前にやっておくべきなのが、兄弟姉妹間の「納得」です。相続には兄弟構成、居住している場所、相続までの時間など、さまざまな要素があるため、一概に「こうすべき!」というものはありません。

また、相続は金額で揉めることももちろんあるのですが、それはお金以外の「俺は○○円しかもらってないのに、長男だからこんなに負担がある」「俺はこんなに介護をがんばったのに、どうして□□円しかもらえないんだ」という要素が絡んだ複合的なものです。

縁起の悪い話ではありますが、相続する兄弟姉妹と両親で「介護が必要になった場合はどうするか」「両親の家はどうするか」「仏事や法事などは誰がやるのか」など、話し合いをしておくとよいでしょう。

判で押したように「遺言書を作っておきましょう」と言われることがありますが、どんなにしっかりとした遺言書を残しても、当事者間で納得いかないものは揉めごとの種です。

大事なのは「納得」ですので、家族水入らずの旅行にでも行った際に、ぜひ一度、お酒でも飲みながら話し合うとよいと思います。

「法人化」してメリットがある人は

現在、手持ちの不動産を賃貸として貸し出しているケースであれば、それを個人から法人の持ち物に変えたり、不動産管理会社を作ることで相続税の負担を軽くする伝統的な方法があります。

その際のメリットとデメリットを挙げます。

メリット

1つ目のメリットは、その後の家賃収入を役員報酬というかたちで自然と子供に移動できることです。もちろん、役員として仕事しているという実態は必要です。

2つ目は、不動産だと贈与しても金額が大きいため、どうしても贈与税が多額にかかってしますが、法人にすると株式というかたちで分割して贈与できるので、比較的贈与税を低く抑えることができます。

デメリット

ただし、デメリットもあります。法人設立後、間もなく親が亡くなり相続が発生した場合は、あまり効果が期待できません。つまり「早めに始める」必要があるのです。

また、法人である以上、事業税や税理士への報酬など追加的なコストがかかります。

そう考えると、法人化してメリットがある人は、大きな金額の不動産を持っている方(2億円くらいでしょうか)、想定される相続まで時間的な余裕がある方となります。

相続でよく揉めるのは?

兄弟間の相続で一番揉めるのが、現金や預金・株はそれほどないけれど、親の自宅が青山や世田谷にあるようなケースです。この場合、兄弟だれもが現金や預金・株ではなく「親の家」を相続したいと思うはずです。

もちろん法定相続人である兄弟には平等に遺産を受け取る権利がありますので、最悪の場合は家を処分して現金にして分割、もしくは家を共同名義にする……という非常に非効率、かつ面倒くさいことが起こります。

家を処分して現金化するためにも少なくない手数料がかかりますし、共同名義にすると売ったり貸したりすることが実質難しくなり、せっかくの好立地の家も台無しです。

これは私の個人的な意見ですが、そういった資産価値の高い家を持っていて、お子さんが複数いらっしゃる場合は、ご存命のうちに家を分割しやすいように現金化しておくこともひとつの手だと思います。

前述のような法人化もひとつの方法ですが、結局、役員報酬をいくらもらうのかなどの点で揉めるケースも少なくありません。

過去の日本であれば、「家を長男が相続するかわりに、法事なども責任を持って行う」という不文律があり、ほかの兄弟も納得していたのですが、現在は以前ほど法事や仏事の負担も重くなくなり、この不文律に長男以外の兄弟は不満を抱きやすくなっています。

慣れ親しんだ家を処分するのは気が引けるかもしれませんが、自分が亡くなった後に仲の良かった兄弟姉妹が血みどろの争いをするのもまた気が引けると思います。

たとえば1億円の家をお持ちの方は、それを売却して、郊外に2,000万円程度の中古マンションを購入、残りの8,000万円は老後の生活費に充てる。そして亡くなった時点で残っている預金を兄弟姉妹が仲良く分け合う……というのが一番合理的で経済的だと考えられます。

1億円もの豪邸は、維持費・管理費・税金も高いので、老後の支出を減らすためにも有効です。

Card Stocks

連載・特集

Ranking

Pick Up

Keyword

Authors