はじめに

「10年年金」という言葉、最近よく耳にしませんか?

従来は受給資格期間が25年(300ヶ月)以上ないと、老齢基礎年金や老齢厚生年金を受け取ることができなかったのですが、2017年8月1日より、その期間が25年から10年(120ヶ月)へと短縮されました。これが「10年年金」と呼ばれています。

今回は、この10年年金の概要をわかりやすくご説明しましょう。


2017年8月から対象者数は73万人以上に

2017年8月の法施行によって年金の受給資格対象者数は、65歳以上が約40万人、65歳未満で特別支給の老齢厚生年金を受給できる人が約24万人、障害・遺族年金の受給者で老齢委基礎年金等を受給できる人が約9.5万人、合計約73.5万人となります。

また、それ以外の“カラ期間”を含め、受給資格を満たす方がかなりの数いるといわれています。もしかすると受給資格がないと諦めていたあなたも年金をもらうことができるかもしれません。

そもそも「受給資格期間」って?

年金の受給期間とは、国民年金加入期間のうち「保険料を払った期間と免除期間+厚生年金加入期間+カラ期間(合算対象期間)」のこと。

この合計が10年(120ヶ月)以上あり、受給開始年齢(男性昭和30年8月1日、女性昭和32年8月1日以前生まれ)に達していれば、8月1日に受給権が発生し、9月分からの年金支給が始まります(実際の受け取りは10月以降です)。

なお、カラ期間(合算対象期間)とは、サラリーマンの妻が国民年金に任意加入だった昭和61年3月以前のうちの20歳~60歳の期間などを指します。ただし、このカラ期間(合算対象期間)は、年金額には反映されません。

受給対象者には封筒が届く

2017年8月の法施行によって受給対象となる方、つまり受給資格期間が「10年以上25年未満」で受給年齢に達しているほとんどの対象者の方には、下画像のようなA4の黄色い封筒がお手元に届いているかと思います。

封筒の中には「年金請求書(国民年金・厚生年金保険老齢給付)」と書かれているA4書類が同封されており、四角囲みで赤く「短縮」という文字が印刷されています。

その請求書に必要事項を記入し、ねんきんダイヤル(0570-05-1165)で予約をしたのち、年金事務所に提出します。予約の際に必要書類(雇用保険被保険者証写しなど)をしっかり確認しておくと、書類不足で年金事務所へ何度も行く必要がなくなります。

予約すると待ち時間がないだけでなく、手続きに要する時間も大幅に短縮されるため、必ず予約を取ってから手続きに行きましょう。

ただし、10年年金の受給対象者に対して、年金事務所から口座の情報を聞くような電話が入ることは絶対にありません。不審な電話にはくれぐれも注意してください。

10年年金の年金額は19万4,800円

では、老齢基礎年金の額から見てみましょう。

老齢基礎年金を満額受給するためには、20歳~60歳の40年間(480ヶ月)保険料を納めている必要があり、その場合の年金額は2017年度の場合77万9,300円です。

10年納付、20年納付で見ると年金額は以下のようになります。

■10年(120ヶ月)納付済の方
77万9,300円 × 120ヶ月/480ヶ月 = 19万4,800円


■20年(240ヶ月)納付済の方
77万9,300円 × 240ヶ月/480ヶ月 = 38万9,600円

65歳以上の方であれば1ヶ月、65歳未満であれば1年以上、厚生年金や共済年金などの被保険者期間があれば、さらに老齢厚生年金が上乗せされます。年金額は厚生年金被保険者期間の標準報酬額(月々の報酬と賞与の合計)の平均と加入月数によって異なります。

封筒が来なくても受給できる場合も

また黄色い封筒が届いていない方でも、10年の受給資格期間を満たしているケースがあります。

確認事項は2つ。

まず1つ目は、受給開始年齢に達しているのに受給資格のない方で、旧姓など今の姓とは違う姓があり、当時、国民年金の保険料を払っていた、または厚生年金に入っていたはずなのに、「ねんきん特別便」などにその記載がない人。

そして2つ目は、洩れている「カラ期間(合算対象期間)」がないかどうかです。

以下の期間がある方は、カラ期間があるかもしれません。

・婚姻している(していた)期間があり、その期間のうち配偶者が厚生年金や共済年金などの被保険者であり、自身はどの公的年金制度にも加入していなかった期間がある(この場合、配偶者の氏名・生年月日・基礎年金番号が必要です)
・20歳以降に大学院・大学・短期大学・専修学校・各種学校の学生であった期間がある(夜間部・通信制は除く)
・海外に住んでいた期間がある
・外国籍である(あった)人で帰化または永住許可を受けている
・厚生年金保険・船員保険・共済年金で一時金を受けたことがある
・公的年金制度から障害年金または遺族年金を受けたことがある
・本人または配偶者が、昭和61年3月以前に国会議員や地方議会議員であった期間がある
・恩給法・執行官法・旧令共済組合などによる年金を受けたことがある
・国民年金の任意脱退の承認を受けた期間がある

これらに該当する期間がある場合は、まず、ねんきんダイヤルで相談し、必要であれば年金事務所の窓口に出向いてください。その際も、必要となる情報や書類を確認しておくことが重要です。

繰り上げ・繰り下げもできる

65歳未満の人は繰り上げ、65歳以上の人は最長5年間の繰り下げを選択することもできます。詳しいことはねんきんダイヤルまたは社会保険労務士に相談してください。

金額の多寡ではなく、「もらえない」と諦めていた年金がもらえることになるととてもうれしいですよね。

法改正によって発生したせっかくの権利ですので、めんどうだと思わずに早めにご相談してください。

執筆:小野 みゆき(中高年女性のお金のホームドクター)
社会保険労務士・CFP・1級DCプランナー。企業で労務、健康・厚生年金保険手続き業務を経験した後、司法書士事務所で不動産・法人・相続登記業務を経験。生命保険・損害保険の代理店と保険会社を経て2014年にレディゴ社会保険労務士・FP事務所を開業。セミナー講師、執筆などを中心に活躍中。

(記事提供:Mocha

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