はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は花輪陽子氏がお答えします。

夫婦共働きで、夫とは財布が別です。支出は基本半々ですが、私の方が多めです。夫はおそらく額面で950万円程だと思います。小学生と中学生の子どもと4人暮らしです。私は外資系企業に勤めているため給料の変動が激しく、年収は2,000万〜1,300万円です。この10年くらいは平均で毎月50万円ほど貯蓄できていますが、今後はわかりません。4,500万円の自宅ローンは完済しています。現在の金融資産は以下の通りです。


・日本円普通預金:1,000万円
・ドル普通預金:1,500万円
・貯蓄型保険の日本円積立:1,200万円
・ドル積立:1,200万円
・投資信託(NISA含む):650万円
・401k:450万円


なお、節税対策として、都心の駅近くの1Kマンションを複数件(1億2,000万円)持っており、家賃収入(毎月40万程度)とローンを相殺させています。私の死亡時にはローンが免除となるため、遺産として子どもたちに相続させます。相談内容は、毎月貯金している50万円を投資信託の購入にした方がよいのか、ローンの返済に回した方がいいのか、別の運用がよいのか、アドバイスいただきたいです。収入が下がってきた場合、維持できている場合など、条件をいただけると助かります。また、可能であれば、相続税対策などもいただけると幸いです。今までは、まとまったお金になると、貯蓄型保険を購入したり、流動資産を増やすことにフォーカスしていました。なお、下の子は私立の中学に、上の子は私立の高校に行く可能性があります。


〈相談者プロフィール〉
・女性、39歳、既婚、子ども2人(小学生・中学生)
・職業:会社員
・居住形態:持ち家(戸建て)
・手取り月収:85万円(妻のみ)
・毎月の支出目安:35万円(妻のみ)


花輪: 「相続税を支払うのはお金持ちだけでしょう」と思っている人も多いかもしれませんが、普通の会社員でも相続税対策を考えなければならない時代になりました。

2015年以降、相続税を払う人の割合は倍増

2015年から相続税の基礎控除が引き下げられ、相続税を払う人は約12人に1人になり、2014年と比べて相続税を払う人の割合は倍増したのです。マネーコンサルティングをする際にも、会社員の場合も相続税を意識しなければならない人が増えたと感じます。

相続税の基礎控除:「3,000万円+600万円×法定相続人の数」

相続人が1人のケースでは基礎控除は3,600万円、2人のケースでは4,200万円です。相談者の場合、金融資産が6,000万円程度に不動産もあるため、相続税とは無縁ではなくなります。

自宅の土地の場合、一定の基準を満たすと限度面積の330平米まで、土地の評価額を80%減額してくれる特例(小規模宅地等の特例)があります。つまり、評価額1億円の土地を相続したとしても、特例を受けることができれば評価は80%オフの2,000万円になるのです。

特例を受けることができる相続人は、配偶者、同居親族、持ち家のない親族、お財布が一緒の親族などに限られます(配偶者以外が相続する場合は「申告期限まで売らない」などの要件があります)。

相続税対策はどうすればいい?

しかし、投資用不動産は対象外です。ただし、預貯金などで保有する場合と比べて評価額を下げる効果はあります。相続が心配な場合は、早めに相続に強い税理士などの専門家に相談をするとよいでしょう。

生前贈与(暦年課税による贈与)を使って相続財産を減らす、財産の評価額を下げる(不動産の活用)、制度を利用する(生命保険などを使う)などの方法もあります。

1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた金額が、基礎控除額の110万円以下なら贈与税はかからず、申告も不要です。不動産は時価より低く評価されます。また、生命保険の死亡保険金は「500万円×法定相続人の人数」まで非課税になるので、生命保険を活用する人も多いです。

貯金に回している50万円はローン返済に

ローン返済か運用のどちらを優先すべきかに関しては、セオリーはローン返済を優先させることです。運用はリスクがあって資産を減らしてしまう場合もありますが、ローン返済は無リスクで金利を浮かせる効果があるからです。

ただ、現金を手元に残しておいて、生命保険を効果的に活用させることも有効です。金利や投資環境も見ながらバランスよく考えるのがよいでしょう。

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