1,500兆円を見守るシステム「アラジン」

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お金の管理を任せる相手は、人か?機械か?

個人レベルでは、まだまだ結論がでないこの問題。
ただ、プロの運用の世界では、後者に軍配が上がっています。

今週の英Economist誌の巻頭記事を飾るのは運用会社ブラックロックをもじった、大きな岩です。
その中で取り上げられているのは、アラジン、という名前のリスク管理システム。

ブラックロックは、年金基金や保険会社などを中心に400兆円を超える顧客の資産を運用する世界最大の資産運用会社です。

運用内容の多くは、本業である債券運用や、買収したインデックス運用会社が中心となっているので、いわゆる「トレーダー」の世界とはイメージとはかけ離れたおとなしいものですが、とはいえ顧客の資産運用を任されている点では変わりありません。

上記の400兆円の資産運用に加えて、同社は他の運用会社に、リスク管理システムを提供するサービスも行っています。その結果、自他併せて、合計で1,500兆円を管理しています。
1,500兆円といえば、日本の個人が持っている金融資産と同額。それを、一手に見守る形となっています。

このようなリスク管理システムでは、株価や金利の動きに加えて、リーマンショックや、鳥インフルエンザなどがもたらしうる影響も含めて、ありとあらゆるシナリオに備えて、資産がどのような動きを見せるのかを管理できるサービスとなっています。このようなサービスは、多くの会社にとって自分でやるよりは、専門家のスキルに頼る方が合理的なため、ブラックロックのような大手にアウトソースが行われる形になっています。

ただ、Economistの記事では、世界の金融資産の7%にも相当する財産の管理が、一つのシステムに集中していることへの懸念も取り上げています。

確かに、リスク管理も、いくつかの前提の中で行われるテストではあるので、あまりに多くのお金が「一辺倒」なテストで検証されると、いざとなった時に、色々な物が共倒れになるリスクは発生します。また、専門家なら大丈夫だろう、とあまりに外部のシステムを信頼するがあまり、自分たちのリスク感覚がなくなることについても取り上げています。

どこまで信頼できるシステムがあったとしても、使う側の能力の方がよほど大事。現にブラックロック社のCEO自身、「計算モデルが正しいと信じることは、正しくない」とコメントしています。
どんなに素晴らしいツールがあっても、自分のアタマで考えることが、リスク管理の基本であることに変わりはありません。

よく考えて見れば、アラジンと言われると、「ジーニー」のイメージがすぐに思い浮かぶものの、アラジン本人はそれを使いこなす主人公の名前でした。

自分のアタマで考えることは、やっぱり重要ですね。

<参照>
The Economist 2013年12月5付記事 The monolith and the markets

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