図表1 国別に見た富裕層数
本年も、CapGemini社による世界のお金持ちに関するレポートの2014年版が、先月発表されています。
同レポートは、地域別に100万ドル(約1億円)以上の資産がある富裕層の統計を紹介しているほか、テーマ別にも深い分析を行うため、毎年大変興味深い内容となっています。
日本に関するあまり触れられることの少ないデータも紹介されているその内容について、二回にわたってそのハイライトをご紹介します。
このレポートでは毎回、国別に見たお金持ちの人口を見ています。
冒頭の引用図にもあるように、実は日本は世界第二位のお金持ち大国となっており、3位のドイツの2倍以上、4位の中国の3倍近い、232万人の富裕層がいる形となっています。その総数も、アベノミクスの効果を受けて2013年中に22%も増加する形となりました。
人口あたりのお金持ちの割合を計算すると、日本は1.82%と、1.27%の米国、1.37%のドイツよりも多く、中国の0.05%などと比べれば、日本は実はお金持ちが「身近」にいる国といえるのかもしれません。
富裕層ビジネスというと、成長著しいアジアや中東をターゲットとした事業が思い浮かびますが、実は国内こそが巨大市場であり続けています。
次に、地域別に見た富裕層の資産の分布を見ると日本人については、預貯金の割合が43.8%と、他の地域が20%台であるのに比して、軒並み低い水準となっています。日本人の預貯金偏重は長らく続いている現象ですが、デフレが続いた影響で、アベノミクスの効果を経ても、この割合はそうは変わっていないことがわかります。
図表2 富裕層の資産配分イメージ
一方で、他の地域よりも目立って少ない割合は示しているのは不動産です。日本の11.4%は、他国の20%超の水準とくらべても、かなり低い水準にあるといえます。こちらも、長年の経済環境の中で、土地を資産として保有することの意義が、他国と比べればだいぶ少ないと感じられていることが、数字に現れている印象です。
三点目ですが、本年の特集の一つとして、金融機関からのデジタルな接触に関する調査結果をご紹介します。
図表3 富裕層の対人・電子的な営業への評価
上記のグラフは、富裕層の人たちが金融機関に対して、左側が対人的な営業をより評価する割合、右側が電子的な営業(メールやウェブ等での情報提供)をより評価する割合、を見たものとなっています(※)。
際立っているのは、日本における対人営業に対する低い評価です。米国大陸では対人営業の方が高い評価を得ている中、日本については、むしろメールやウェブを経由した接触を好んでいる調査結果となっています。あんまり邪魔しないで、静かに思うようにさせて欲しい、と考える富裕層像が、ここでは浮き彫りになっているのかもしれません。
次回のブログは、このデジタル化を好む富裕層像について、より掘り下げてみることにしましょう。
(※)左側は「対人での接触の方が、デジタル(メールやウェブ)での接触よりも助かる」、右側が「デジタルな接触の方が対人での接触よりも助かる」という回答人数の割合を見たものとなっています。
※図表は全てCG社2014年度調査レポートから。本文はWorld Wealth Report 2014のページよりダウンロードできます。