200年のベールを脱いだスイスの銀行

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket

4703467724_5d7ff99e93_z

今週、200年以上に渡って情報を明かしてこなかったスイスの銀行が、その財務内容を発表しました。

その銀行名はピクテとロンバード・オディエ。前者は、投資信託の運用会社としてご存知の方も多いかもしれません。いずれもスイスの富裕層向け銀行の大手になります。

スイスの銀行というと、どうしてもゴルゴ13(例えが古い?)の頃から、何だかよくわからないけれど、秘密のお金を預ける場所、というイメージがあります。

事実、スイスの銀行のサービスでは、独特の守秘義務の元に匿名口座を提供しているケースがあり、世界中の富裕層や政治家に用いられてきました。

このような銀行では、銀行に万が一何かが起きた場合には保有者である数人のパートナーが無限責任を負う組織により、経営されていることが特色であり、信頼が置かれる一つの理由となっていました。

しかし、銀行の秘匿性は近年、特に米国の税務当局から脱税行為に用いられているのでは、と厳しい指摘を受けるようになりました。

その結果、2009年のUBSが7.8億ドル(当時の約700億円)、今年5月にクレディ・スイスの26億ドル(約2,600億円)という巨額の和解金を米国当局に支払うに至り、従来のビジネスとは桁違いのリスクが、プライベートバンクのパートナーに及ぶようになりました。

そして、ヴェゲリンというスイス最古のプライベートバンクが廃業するなど、実際に銀行としての継続ができなくなった例も出てきました。

そのため、銀行を有限責任とすることでパートナーにも必要以上のリスクが及ばないようにし、また、成長や海外展開を進めやすい組織形態への転換を、という決断を下したのが、ピクテとロンバード・オディエだった形になります。

さて、ベールを脱がされた二行の中身、さぞかし面白いものではないか、と思いきや、割と(想像通りの?)、富裕層向けの資産管理と、投資の運用を軸とする、安定した財務内容が見て取れます。

ピクテは3,611名の従業員、40兆円近い顧客資産、そして、退職率4%という安定した所帯の中で、2014年上半期は約240億円の純利益。
ロンバード・オディエは20兆円弱の顧客資産、上半期は約70億円の純利益。

不思議な資産などもあまり見当たらず、割とシンプルな、資産規模の大きい優良な老舗、というイメージが見て取れます。あと、気のせいかもしれませんが、公表資料のデザインがきれいで、高級感が溢れています。
200年のベールを脱がすと、現代の通常の大手銀行という姿が現れたのでした。

そうそう、スイスには、このような環境の中でも無限責任を維持し、ベールを脱いでいない銀行がまだいくつかあります。
無限責任を貫くこっちの銀行の方に、ひょっとするとルパンやらゴルゴの資産はあるのかしれません。

先立つものは無い筆者も、いつかこういった銀行のお世話になってみたいものです。
 
 
 
 
Photo by Thomas Giuretis

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket

SNSでもご購読できます。