超大型調達が続く海外のソーシャルレンディング

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket

fc

今週、英国のソーシャル(P2P)レンディング会社、Funding Circleは1.5億ドル(約180億円)の資金調達を発表しました。この調達により、同社は累計で2.7億ドル(約320億円)を集めた形になります。

奇しくも今月、4月8日に米国のProsperは1.65億ドル(約200億円)の資金調達を発表しました。昨年Lending Clubが上場時に9億ドルを調達したことを皮切りに、WorldRemit社が1億ドル、Kreditechが負債を含めて2億ドル等、ソーシャルレンディングでは超大型の調達が相次いでいます。

ソーシャルレンディングは、日本ではまだまだ拡大途上のビジネスですが、借り手が自らの資金需要を公開し、貸し手となる個別の投資家がそれを吟味して投資する仕組みであり、超大型ベンチャーを表すユニコーンクラブ(評価10億ドル以上)のFintechベンチャーが、2社も今月は誕生した形となります。

インターネットが生まれてからはいつ拡大してもおかしくなかったこのビジネスは、ビッグデータの利用と、機関投資家の参入を受けて、近年ようやく大規模な拡大を遂げています。この背景には、金余りの時代と言われつつも、中小企業や個人向け貸付ではまだ資金需要が旺盛にあることが挙げられます。

金融機関はどの国でも、貸出ではお金を借り、貸し付ける際のマージンをその収益源としています。そこから、銀行であれば支店や、行員の給与が支払われる形となります。

その長期的なマージン(預貸スプレッドと呼ばれます)を見ると、日本では低金利環境もあって、この数字が長らく2%を切る水準が続いてきました(※1)。

一方で、欧米を見ると、英国を例外として、米国やドイツ、フランスなどでは、4-6%のスプレッドが確保できていました。

借り手からしたらより高い貸付金利、預金者側からすると安い預金金利が存在していたことになります。このマージンに対して、支店を設けず、コンピューターが自動的に審査を行うソーシャルレンディングサービスは、より低い貸付金利、より高い預金金利、という価格を提供することが可能となっています。

Funding Circle社は米TechCrunchによる同社へのインタビューの中で、同社が銀行との競合を想定していることや、同社の認知率がまだ5%を切る水準であり、そのこと自体がチャンスである、と表明しています。また、銀行にたまたまローンを断られてしまう人たちがまだ要る中で、同じようなサービスを提供しているだけでも、多くの市場が掴めていけるもの、と見ているようです。

預貸スプレッドが相対的に薄い英国ですら、このような大型プレーヤーの誕生が見られていることに鑑みると、日本でも同様にチャンスはあると考えても良いのかもしれません。

※1 『わが国金融機関における預金の低収益性』みずほ総研論集2012年Ⅰ号

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket

SNSでもご購読できます。