7月の始めにKPMGが2015年版のモバイルバンキングのレポートを発行しました。
同レポートでは、KPMGがUBS調査部門と共同で、世界におけるモバイルバンキングの利用実態を公表しています。
レポートのハイライトとしては、世界では、モバイルバンキング人口が年率30%以上の高成長率を継続し、今後5-10年間で更なる飛躍が予測されていること等が述べられています。
そのような国際比較の中で、日本の特異性が際立つのが下記のグラフになります。

KPMG “Mobile Banking Report 2015″(元データはUBS Evidence Lab)
上記レポートでは日本特有の要因は述べられていませんが、米国での調査に基づくと、モバイルバンキングを利用しない理由としては、モバイルでなくとも取引が完結することや、セキュリティへの懸念などが挙げられます。
スマートフォンの普及率(平均的な人口構成にも依存)、既存の支店やブラウザでのインターネットバンキングの充実なども要因とはいえますが、ここまで明確なグラフを前にすると、日本でのモバイルバンキングの利用余地は、まだまだ大きいということができそうです。
また、もう一つの象徴的な調査結果が、下記の国別の銀行に対するNPS(顧客満足度※)指標になります。

日本でも、同様の傾向が見られていますが、目立つのはそのスコアの圧倒的な低さです。一般的に、日本の金融機関は海外に比べても高水準のインフラを低価格で提供しているとされるにも関わらず、NPSが低く計測されていることは意外な印象もあります。
この水準は日本の消費者の厳しさを表しているのかもしれませんが、モバイル端末を用いたUXの改善がプラスに寄与することが判明している中では、銀行のモバイルへの取り組みをより迫るものと言えます。
下図にもあるように、モバイル領域の中でも「付加価値型」と呼ばれるサービス(PFMや本人認証系ツール、ウェアラブル対策等)については海外の金融機関でも提供が行われていないジャンルとなります。日本では率先して、この領域での深耕が待たれるものといえるのかもしれません。

※1NPS:Net Promotor Score、「あなたは製品・サービスを友人に薦めますか?」を0~10段階で聞き、推奨する立場(スコア10~9)の割合から、それ以外の割合を差し引くことで得られるスコア。顧客の満足度やロイヤルティを計測するために用いられることが多い指標。
※2図表出所はすべてKPMGレポートより。