Yodleeの買収

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8月10日、米国で、アカウント・アグリゲーション事業を提供するYodleeが、資産管理向けシステムを提供するEnvestnetに買収されることが発表されました。

Yodleeは銀行やクレジットカード口座の情報を一元集約し、金融機関や情報サービス向けにシンプルなデータとして表示・反映するアカウント・アグリゲーションサービスを提供しており、日本ではマネーフォワードも類似したサービスを提供しています。その創業は1999年と古く、もはや古参Fintech企業の一つといえる位置づけのプレーヤーであり、現在900社を超えるパートナー企業と、2,000万人を超える有料ベースのエンドユーザーを抱えています。

今回の買収時の企業価値評価は5.9億ドル(約740億円)とされており、直前株価に対して50%のプレミアムが付された形で合意に至った模様です。

Yodleeは近年、プラットフォーム戦略を明確にしており、2010年以降、Yコンビネーター参加企業にもプラットフォームを提供するなど、従来、メインの顧客層であった銀行業のみならず、エンドユーザーにデータを提供する情報サービスへと、顧客セグメントの拡大を図っています。

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出所:Yodlee開示資料

このようなプラットフォーム戦略への移行の結果として、3年強でユーザーベースは2倍以上に拡大しました。

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出所:Yodlee開示資料

一方で、買収側のEnvestnetは、米国において主要な証券投資チャネルとなりつつある、独立系投資アドバイザー(通称IFA)の市場にシステム提供を行っている会社となり、こちらも1999年創業のシステム会社となります。

既に4.2万人のIFA、300万人の投資家を支えるプラットフォームを提供しており、これらの顧客がラップ口座や保険商品を販売していくにあたっての情報インフラを支えている形となります。

Envestnet社のプレスリリースでは、両社が統合することで、投資家と金融機関の間の「デジタル・デバイド」が解消する効果があることを発表しています。

これには、EnvestがIFA側を中心にしたシステム提供を行い、Yodleeが消費者中心のシステム提供を行ってきた中で、両者間のコネクションを深めたいという意向があるようです。特に、Yodleeの中でも、近年の拡大が著しかった領域が資産運用であったことが、今回の統合のシナジーの一つの根拠とされています。

買収発表後のマーケットの反応としては、発表前日に45.21ドルだったEnvestnetの株価は、直後の終値で29.38ドルまで下落した後、更に翌日に35.79ドルと回復するなど、いろいろな思惑が混ざったものとなっています。

とはいえ、YodleeとEnvestnetは、どちらも2000年代以降の米国における、銀行データのオープン化と、証券会社からIFAへ、という流れを象徴してきたプレーヤーであり、「先輩Fintech企業」としてのシナジーや実力が、今後、より注目されそうです。

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