ProsperによるBillGuardの買収|Fintech(フィンテック)研究所

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米国のセキュリティ系PFMサービスBillGuardが、同じく米国で近年勢いを増すP2Pレンディング大手Prosperに買収されることが明らかになりました。

BillGuardは、過去にも弊社でPFMの独特なプレーヤーとして取り上げてきた事例の一つとなります。

同社は、自社のことを「請求データのアンチウイルスシステム」と位置づけており、自動取得された出金履歴の中から、不正送金や怪しいと思われる手数料を自動検知するサービスを提供しています。

その自動検知も、単なるビッグデータによる分析のみならず、個別のユーザーが報告した事例を集合知的に活用して、リアルタイムで「怪しい取引」のデータベースが更新されていく仕組みとなっています。同社の提供するSAFER TOGETHERのサービスでは、直近でどのような不正検知があったのかを見ることができるマップが提供されています。

さらに同社の特長として、単なる検知のみでなく、実際の対応策を提供していることが挙げられます。一旦不正な出金と認識した履歴については、商店側に返金を求めるボタンが提供されるため、少額で「泣き寝入り」しそうな金額の不正であっても簡単に回収を行うことができます。また、例えば「財布を落とした」場合などに、一斉に利用を止めることができるサービスも平行して提供しています。

同社はイスラエルでセキュリティ関連の開発を行う一方で、ビジネス拡大は米国で行う、という構成でシェアを拡大してきました。サービス開始初期は有料サービスで展開していましたが、昨年以降は、かなりの機能を無料で提供する方針へと転換を行っています。また、最近は、携帯端末のある場所をGPSで捕捉しつつ、そことは無関係な場所でカード決済が行われた際にアラートを出すサービスなど、かなり多面的なセキュリティツールを提供してきました、

BillGuard社は同社のブログにおいて、米国において最も急成長しているP2Pレンディングプラットフォームと、最も速く成長しているPFMツールの「完璧な結婚」と述べています。

報道によれば買収の対価は30百万ドルとProsper社の株式とのことではあるものの、正確な評価額は明らかにはなっていません。

また、双方とも個人向けのFintechサービスとはいえ、ビジネス領域は直接は重ならない中で、Prosperの融資審査に落ちてしまった層に向けたサービス提供が一つの狙いではないか、とする見方もあります。同記事ではこのことに加えて、独自のクレジットスコアを提供するCredit KarmaもProsperが併せて買収しにいくのでは、というシナリオも挙げられています。

クレジット市場が大きく広がる米国では、Lending Clubの上場に留まらず、様々なレンディングサービスが拡大しています。個別のプレーヤーの中でも、より定着しやすく、拡大できるプラットフォーム戦略として、個性をもったPFMサービスが組み込まれ始めている、という構図が今回の買収からは見えてきます。

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