英国のFCA(金融行為規制機構)は11月10日、来年に向けて「規制の砂場」を作ることで、イノベーションを後押しする試みを公表しています。
FCAが公表したのは、”Regulatory Sandbox”と呼ばれる試みに関するレポートです。
FCAは従来からも紹介している通り、一年前にProject Innovateという取り組みを始めました。消費者の利便性を高める新しい金融のあり方を模索するべく、起業を様々な形で支援している中で、この度、規制上の不確実性を低減するため「Sandbox」という方法を採る方向性を示しています。
同レポートでは、Sandboxについて「イノベーティブな商品・サービス・ビジネスモデルやメカニズムについて、現行法・制度を即時適用せずに、実験的な試みを可能とする環境」としています。
具体的には、事前に定められた対象顧客に向けてサービスを実験的に展開し、その過程で不利益が消費者に生じないかを事業者側が注意して観察する形になります。場合によっては、非営利団体としての会社を設立し、この実験を行うことも想定されているほか、そのような実験に対して、特に罰則を課さない旨の事前の確認(いわゆるノーアクションレター)を発出することも可能となります。
具体的なステップとしては
1 新規事業を行いたい会社によるSandbox利用の提案
2 FCAが許可に関する判断
3 テスト方法に関して事業会社とFCAが協力
4 Sandboxでのテストの許可
5 テストの実施とそのモニタリング
6 企業からFCAへのテスト結果の報告
7 FCAによる報告レビューの後、実際のサービスローンチへ
という段階が想定されており、Fintech企業による新しい問題解決アプローチが実際に機能するか/有効であるかを、試すことが可能となっています。
レポートで事例として挙げられているのはロボアドバイザーのケースで、ある運用会社が自らの自動アドバイス機能を実証する際に、自動アドバイスに基づく運用を実際に行う前に、人間のFPがそれを確認する、というもの。注意深くプロセスを監視すれば、新しい自動化システムが実際に役に立つか、また、致命的なエラーを孕んでいないかを確認することができます。
実際にこのような実験が可能となることで、新しい事業の展開を目論むプレーヤーは、プロダクトローンチの時間を3分の1程度改善できるほか、資金調達時のバリュエーションも15%程度改善できる余地があるとのことが学術的に示されており、全体的にFintechの振興に関する協力な武器になることが期待されています。
Regulatory Sandboxのあり方についてはPRA(健全性監督機構)との協議を行うほか、FCAのが12月に開催するイベントでも実践内容を話し合う予定とのこと。
世界的にもまだ新しい取り組みでもある中で、各国において追随する動きが見られていくかが注目されるところです。