中小企業向けビッグデータレンダーOnDeckは今週、JPモルガンとの戦略的提携を発表しました。
OnDeckは2014年12月に上場したビッグデータレンダーになります。P2Pで融資を仲介するLending Clubとは異なり、自らローンを組成し保有する他、証券化をして売却も行う、という意味ではデジタル化された銀行に近い位置づけのプレーヤーになります。
OnDeck社はこれまで、データ分析を通じてスモールビジネスの審査を行う能力に強みを発揮してきました。通常の銀行が杓子定規な融資基準で判断を行っている中、クラウド会計ソフトとの連携や独自のデータ分析を活用し、スモールビジネスの多様なキャッシュフロー(下図)にも自動審査で対応、最近では貸倒率を7%未満の水準に抑えることに成功しています。
(出所)OnDeck投資家向けプレゼンテーション(J.P. Morgan FinTech & Specialty Finance Forum, December 2, 2015)より
同社が参照するニューヨーク連銀調査によれば、平均的なスモールビジネスではローンの申請に26時間を費やし、2.7件の申し込みを行っているとのこと。機械化することによるコスト(貸出金利に最終的に反映)の低さに加えて、この業務上の負荷を軽減できることが、ビッグデータレンダーの強みとされています。
また、近年では、12.2ドルの顧客獲得コストで、36.8ドルのLTVを顧客から獲得することができており、対前年でもローン組成額が2.5倍に、直近2四半期で黒字も継続するなど、まさに拡大フェーズにあるプレーヤーともいえます。
今週、行われた適時開示では、OnDeckがその審査機能についてJPモルガンと連携するサービスを2016年に開始する内容が述べられています。開示内の表現を借りれば、OnDeck自体をPaaS(プラットフォームとしてのサービス)として位置づけようとする動きでもあります。
FT記事(要購読)によればJPモルガン内での商業銀行チェースにおいて、同社の中小企業顧客400万社に向けて、即日もしくは翌日融資が可能なプログラムが開始できるものとみられています。
元々、JPモルガンは今年6月頃、Lending Clubを買収するのではないかという憶測があり、その際にはLending Clubの株価が上がり、OnDeckが下がる展開があった中で、その予測の逆を行く形で、今回のパートナーシップは生まれています。ニュースを受けて、OnDeckの株価は一時40%近く上昇しました。
JPモルガンとのプログラムではこれまでと同様に、OnDeck Scoreと呼ばれる自動化された融資審査で、ほぼ即時にその結果が出るとのこと。商品自体はチェースのブランド及びバランスシートから提供されることとなります。いわば、OnDeckはそのスピード審査機能をプラットフォームとして提供し、JPモルガンがインフラと資金を提供していくようなイメージです。
これは、正に銀行機能において、資金余剰主体としての貸し手と、情報生産機能である審査がアンバンドルされたのち、異なる組み合わせにより提供(リバンドル)される好例といえるのかもしれません。