本年も様々なご支援を賜りまして、誠にありがとうございました。心よりお礼申し上げます。
やや唐突ですが、お礼の気持ちを込めてFintech研究所長と所長補佐T氏が厳選したレポート3編、本3冊と音楽3曲をお送りいたします。
これらをお供に、良いお年をお迎えください!
2015年のレポート3編
2015年は様々なアングルでのFintechに関するレポートが発行されました。
レポートは往々にして大部に渡ることもありますが、印象に残るであろう箇所を見つめながら、目の前の課題解決につながるヒントを得る一助ともなります。
金融審議会「決済業務等の高度化に関するワーキング・グループ」報告
「日本におけるFintech政策のいま」がまとまっている報告書になります。現時点での整理と考え方のベースとなるのみでなく、今後の検討のあり方に向けた読み物としても成立する一編となります。やや堅い導入となりがちですが、こちらを通読いただくのは大変おすすめです。
The Fight for the Customer, McKinsey Global Banking Annual Review 2015
(上記リンクからリクエスト後、レポートを取得できます)
直接Fintechを取り上げたレポートではありませんが、金融業の現状と長期ビジョンを考えるための一編。リスクバッファが低減し、コスト削減に依存した利益創出が難しくなる中で、テクノロジーの世界がもたらすインパクトを捉えています。結果として、リテール業務収益の10-40%が何らかの低下圧力・代替を受ける可能性があることを示した点がニュースとなりましたが、一方でいかにリッチな顧客体験をもたらすことが重要かについても触れています。
The Future of Financial Services, World Economic Forum
WEFから発行され、200p近い分量に打ちのめされる方の多かったレポート。
ただし、丁寧にメタレベル・個別レベルの解説をしている点と、全体像として現状の金融機能がいかに代替されるのか、という点に力点を置いていることは特筆されます。保険というテーマを正面から取り上げている点も新しく、その内容として証券化市場など資本市場のプレーヤーによるリスク分担や、細分化による市場のあり方の変更などを細かく示唆するものとなっています。本当にお時間がない方は、p13-20だけでも目をお通しください。
2015年の本3冊
2015年、ベンチャー界隈ではHARD THINGSが、一般向けビジネス書では心理学を起点にしたビジネス書が話題となりました。そのような中、Fintechの世界を見ていくにあたりお勧めの本は、と聞かれることも多くなりました。Techのアイデアはふんだんに供給される中で、地道な世界観を伝えるべくお答えすることが多かったのは下記の三冊です。(直接Fintechの本ではないこと、ご容赦ください)
Fintechがなぜ2010年代になって話題になったのか、を紐解くと、その歴史的な起点の一つはiPhoneの登場にたどり着きます。iPhoneが一つのきっかけとなり、それまで「ITに詳しいヒト」の持ち物であったスマートフォンは、誰しもが持つインフラとなりました。
ジョナサン・アイブ卿は、Appleという一社や故ジョブズ氏との仕事のみならず、スマートフォンそのもののあり方や、人がツールやサービスに触れる時の思いまでも含めて、デザインという概念を体現する人物になります。Fintech自体が金融サービスや金融のあり方・体験そのものの作り直しを意味する中で、その使徒の一人ともいえる方の伝記は必読といえます。
マネーフォワードの立場からおすすめする一冊がこちらです。
帳簿は政治的能力そのものを指し、可視化することや自己把握をすること、牽制機能を制度や組織の中に持つことは、テクノロジーが進化した現在においても全く歴史的とはいえない課題になります。
技術も所詮は使う人次第。PFMサービスや会計SaaSサービスを使って、どのような新しい意思決定を可能としていくのかについては、全く古びることのないテーマとなります。
IIJの創業者である鈴木氏が長年に渡る事業への思いを語った一冊。
インターネットが日本で開通し、その高速化やインフラとしての効率化、高度化を模索する壮大なビジョンと、経営者としての苦悩、組織を思う心など、珠玉の自伝といえます。
あらゆる面において、より知られるべき(ついでに、電子化もできればしていただきたい)一冊と感じます。
金融のリバンドリングと音楽
※下記は自身も音楽家であり、著名なライナーノーツのライターを父親に持つ補佐の思いを所長が文章化したものになります。
※Fintech研究所設立イベントの懇親会にお届けした音楽になります。
所長補佐Y.T.
Fintechでは、しばしばアンバンドリング、リバンドリングといった文脈で、その機能が語られます。
金融サービスは機能により説明することが可能ですが、その技術的・プレーヤー面での組み合わせの違いが、新しいユーザー体験を生んでいきます。
これと同じものが音楽。様々な旋律やインスピレーションを組み替え、影響を受けながら進化を遂げていく中で、聴くものが「その組み合わせがあったか」と感動に身を震わせる点は、Fintechが目指すべき顧客体験と変わりありません。
以下では、そのような観点で「リバンドル」が強く感じられる音楽群を中心にお送りします。
1.Reckoner / Robert Glasper
ヒューストン出身のアメリカ人ジャズピアニスト、レコーディングプロデューサー。Vicente Archer、Damion Reidとのアコースティック・トリオによる圧巻のLIVE音源。Radio Head の名曲であるこの本作は、Gnarls Barkleyもカバーしたことで有名。
ドラマーを真似てつくられたリズムボックスが、ドラマーに真似される時代へ。菊池成孔が語る”今ジャズ”創生の分岐点となった記念碑的作品、「Black Radio 」のエッセンスを詰め込んだ全編Jazzカバーアルバム。
Youtube(オリジナル版)
参考URL1、参考URL2、参考文献:ロバート・グラスパーをきっかけに考える、“今ジャズ”の構造分析と批評(への批評)とディスクガイド
2.Smells Like Teen Spirit / The Bad Plus
ロックでもなくジャズでもない。「一部」の純粋主義なジャズファンには軽蔑され、フリー・ジャズの難解な展開はロック好きから敬遠される。それでも熱狂的な信者たちに支えられ、活動開始から15年経った今年もニューアルバムをリリースし充実の時を過ごしている。アヴァンギャルド・ポピュラリズムの旗手が2003年にリリースした Nirvana のカバーを今こそスピーカーの前で正座のうえ、爆音で聴いてほしい。
Youtube(オリジナル版)
3.Wonderwall / Paul Anka
1941年生まれ、カナダ出身のシンガーソングライター。”Diana”,”You are my destiny”,Frank Sinatraに提供した”My Way”と当時を代表するヒット曲は数知れず。
シンガーソングライター界のアントレプレナーである彼だからこそ表現できる色気と圧倒的なクオリティは他の追随を許さない。2005年にリリースされたSwingカバーの企画盤だが、ポップな選曲とは裏腹な大人の芳醇さが胸を打つ。Oasisの出世作である”Wonderwall”のカバー。
Youtube(オリジナル版)
来年もよろしくお願いします&一点お知らせ
多少の遊び心を含めてしまいましたが、マネーフォワードでは2016年もユーザーの真に役に立つサービス作りと、Fintechの振興に向けて尽力して参ります。
なお、1月15日(金)の18:30~より大手町で、Fintechプレーヤーと共に2016年を展望するイベントを開催予定です。ご都合付くようでしたら、ぜひご予定ください。詳細は本ブログで年明けにお知らせして参ります。
新年もご指導ご鞭撻の程を賜れますと幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。