香港のFintech事情|Fintech(フィンテック)研究所

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今週、香港のFintech事情を調査する機会がありました。

香港といえば、グローバル金融センターランキングで3位に君臨する都市。
その中でも、Fintechを後押しする機関である、FinTech Hong Kongという組織を訪ねてきました。

FinTech HKは、中国の清華大学が複数運営するベンチャー支援施設、TUSパークの香港拠点内に設立されているアクセラレーターです。
まだ施設としてはできたばかりで、日本からはおそらく初の取材とのこと。

また、TUS自体は中国のベンチャー市場の中でも数多くのIPO銘柄を生み出している名高い存在です。

TUSパークは牛頭角という、香港の大陸側北東部分に位置しています。正直なところ、交通の便はイマイチ(空港からはバスで1時間弱)な場所なのですが、ロンドンのCanary Wharfのように第二の金融エリアを目指している地域になります。

TUSパークのビル(中央の黒いビル)

TUSパークのビル

TUSは一棟のビルを借り切っており、多数のベンチャーに並ぶ形でFinTech HKがあります。

TUSパーク入居企業一覧

TUSパーク入居企業一覧

(エレベーターは裏口の業務用しかなく、若者向けの施設となっています)

ここで、FinTech HKのファウンダーおよび事務局の方々と取材をさせていただきました。

取材中で得られた主な観点としては

・日本と比べても金融への依存度が非常に高い香港では、本来Fintechを進めるべき意義が高いこと

・一方で、リテールバンクとしてはHSBCとStandard CharteredはFintechにそれほど積極的ではなく、香港の金融当局自体は、政府からのマンデートの違いにより、シンガポールほどには規制面における積極策には出ていないこと

・香港の金融センターは、中国との窓口としての強さがある。実際に、香港内での事業以外でも、本土からみた対外投資の受け皿としての期待値は強いが、資本規制もありビジネスの立ち上がりのスピードはこれから

・アクセラレーターとしては、3か月プログラムを提供しており、日本からも進出希望の会社のアプライをお待ちしている

といった点がありました。

まだ工事中ということもあり(取材中もドリルの音がうなっていました)、入居企業はまだ数社ですが、香港の市場における今後を占う中で、ひょっとすると聖地となりえる場所なだけに、強いエネルギーを発している場所でした。

入居風景

黒板にもアグレッシブなウェルカムメッセージが書かれ、ゲストにはスーパーチャージャーという不思議なドリンク(甘い野菜ジュースでスパイスの匂い)がふるまわれます。

スーパーチャージャー

そして、業務用のエレベーターに乗ると、西海岸的なスローガンと、王家衛の映画に出てきそうな生活感あふれる落書き。

エレベーター

その後も様々な投資家やプレーヤーの方々とお会いする中で、日本はプレーヤーの成熟度や投資家側の理解、市場への期待値としてはだいぶ上を行っているような印象も受けました。

ただし、投資家たちはロンドンから香港に直接しつつも、東京はスコープに入らないと発言するなど、東京の金融センターとしてのPRと実態を高めていくべき危機感が伝わってくる取材となりました。

なにより、中国本土側ではアリババやTencentなどが、GoogleやAppleなどを上回るスピードで、凄まじいFintechビジネスを進めています。そのスピード感がいつかは香港に伝播してきたときにすごいことが起きるのではないか。

そういうストーリーを求めているようにも感じられました。

(取材後記)

筆者にとって香港×Fintechといえば、Octopus Cardがありました。
世界に先駆けて、ソニーの技術を宿して交通ならず様々な用途に使える、という非常に便利な印象を受けていたのですが、タクシーではほぼ使えなかったり、というデメリットも。

技術もその浸透や導入時期次第で、本当に違うUXをもたらす、というレクチャーになるのかもしれません。

Octopus Card

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