ムーアの法則の次とFintech|Fintech(フィンテック)研究所

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今週号のEconomistではムーアの法則(の終焉)を取り上げています。

ムーアの法則は、いまやIT関連の教科書において必ず触れられる仮説であり、経験的に 集積回路上のトランジスタ数は「18か月(=1.5年)ごとに倍になる」 というものです。

この法則は、提唱されて以降、50年近く実際に仮説通り進展し、よくある喩えではスペースシャトルを打ち上げるのに必要だったコンピューティングパワーを、スマホ一台の中に収納可能とするなど、様々な革新を可能としてきました。

しかし、近年この計算能力が倍になるペースは鈍ってきており、Intel社によれば2.5年に一度、というペースになってきています。2005年時点でも、当のゴードン・ムーア自身が法則の限界を述べている中で、様々な意見があるものの、同じ前提に立つことはできない、という見方がでてきています。

ただし、計算能力に代わって新しい3つのトレンドが重要になる、とEconomist誌は述べています。

一つ目はソフトウェアであり、今週AlphaGOが囲碁において、人間に勝ったことなど、計算力だけではなく、人間の脳を模したアルゴリズムの設計が、物を言う一つの例であったとみられています。このような新たなソフトウェアのあり方が、計算能力の伸びの陰りを補えるのでは、という視点があるそうです。

二つ目はクラウドです。分散されたコンピューターが連結されてマシンパワーとして用いられることで、一つのチップが可能とする計算能力が同じであったとしても、得られる結果を改善できる余地があるのは明白です。
また、いつでもどこでもインターネットを用いることができる利便性は、計算能力とは別軸で利便性を提供している、という側面も挙げられます。

三つ目は新しいコンピューティング・アーキテクチャーです。現在、クラウドコンピューティングやニューラルネットワークといった、新たな処理に向けて、従来とは異なる、専用のチップ開発が進んでおり、これらのクラウド上で適宜利用することで、個々人が高いマシンパワーを持つ設備を有していなくとも、目的に即した高い計算能力を手に入れる手段を増やすことが可能になっています。

Economist誌はこのような側面を見ながら、AmazonやGoogle、Alibabaなどが有している、集約型のクラウドコンピューティングの流れを強めるものとみています。

高い演算能力を必要とする場面は、今次のFintechにおいては、融資の世界ではトランザクションレンディングが、PFMの世界ではリアルタイムの入出金結果などが、資産運用では資本市場のデータを分析しながら、リアルタイムのデータを分析することが、それぞれ重要な観点となってきます。

従来、このようなリソースは社内において抱えることが当然とされてきた中で、今後は上記のクラウド上のリソースが活用され、さらに有益な計算向けソフトウェアが活用される側面が重視されるのではないでしょうか。

ムーアの法則自体はこれまでも、「思っていた以上に継続してきた」中で、将来どのような進展を遂げるのか、やや楽しみにみていくべきではないでしょうか。

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