BrexitとFintechの今後|Fintech(フィンテック)研究所

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先週の衝撃的な国民投票の結果を受けて、様々なメディアがロンドンにおけるFintechの今後に関する論評を出しています。

WSJの記事は、欧州は決済制度の実験的試みがまさに行われている場所であり、そのスピード感自体が失われることを危惧しています。

とりわけ、今後数年かけて導入期に入っていく欧州の決済サービス指令の改訂(PSD2)において、英国が該当するマーケットではなくなることがもたらすインパクトはやはり大きいとみられています。英国はオープンな金融の形を追求し、銀行APIなどに関する議論をリードしてきた背景もあるため、未来志向でもあり、抵抗も多かったこの指令に対する見直しの機運が高まってもおかしくないものといえます。

同記事ではTransferwiseのCEOであるHinrikus氏も、当面はその予定はないものの、ロンドンから他の国に本拠を移すことも選択肢にあると述べています。一方で、スウェーデンのユニコーンKlarnaの広報役員も、多くのベンチャーが今後ドイツに移るのでは、というコメントをしています。ベンチャー以外でも、金融機関の業務においてはパリとフランクフルトに一部のビジネスラインを置き、バックオフィス部門はダブリンに移す、といった可能性も出てきそうです。

一方で、今回の投票結果が僅差でもあったことから、今後の離脱交渉においても農業の問題と移民問題のみにおいて妥協案を探り、他の経済関連制度については維持が図られるのでは、とする見方もあるようです。

同記事では加えて、たとえばスイスやノルウェーのように、欧州連合に加盟せずとも域内で国際的プレゼンスを保てている国の例もあり、これらの国がEUによって何か不利益を被っているかといえばそうではなく、EUと英国の関係は最終的にはソフトランディングできるのでは、とする見方がされています。

またFinancial Timesが”How big a blow is Brexit?”というタイトルで配信したニュースレターによれば、4つの理由によりFintechは打撃を受けるとしており、1.一流人材の獲得、2.投資家の期待値の冷え込み、3.シングルパスポートの喪失、4.経済低迷、を挙げています。ある意味ロンドン発の冷静な自己診断ともいえますが、このような状況の切り抜け方については、予断を許さない状況にあるといえます。

本拠を移す旨の議論は、ロンドン市が様々な規制上の制約に置かれそうになった際に、よく持ち出される議論でもあります。一例としてロンドンに本拠を置く大手銀行HSBCも、その本拠を移すかが取りざたされてきましたが、2月にとどまることを選択しています(今回の件により、またその検討が行われる可能性はありますが)。シングルパスポートと同等の制度が新たな制度の中でも維持されるか、そもそも国民投票に対するやり直しの機運などがある中で、全く予断を許さない状況といえそうです。

今週の読んでおくべきニュース

JPモルガンによる行内で起業家養成プログラム
自行向け技術の開発促進が目的

中国人民銀行によるFintechへの監視に向けたメッセージ
1月のみでもMYBANKが5000億円を融資した中、今後はメインストリームとしての監視体制が加わる可能性

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