バンキング・バイ・デザイン

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7月21日、ドイツで金融サービスを展開するベンチャーNumber26は、欧州中央銀行より銀行免許を取得したことを発表しました。

bankingbydesign

Number26はこれまで、為替・送金サービスを営むベンチャーとして活動してきました。ドイツの銀行Wirecardのソリューションを活用し、20万人のユーザーへのサービス提供を行い、直近では一日500-1,500口座が開設されるなど、新しい銀行サービスの有望株と見られています。

また、Number26のバックエンドを別の銀行が提供し、サービスのUI部分でスケールしてきた形は、(買収前の)Simpleにも似た形といえます。同社は、バンキング・バイ・デザイン(意図通りに使える銀行サービス)というテーマを標ぼうしており、「銀行アプリといえば使いづらい」というイメージを排するビジネスモデルといえます。

欧州の同様のプレーヤーとしては、Atom BankとTandemがありますが、両方とも英国でライセンスを受けた会社であるため、今般のBrexitにより、EU内での展開力では差が出てくるものとなります。6月21日には40百万ドルの増資も行っている中で、いよいよその本格展開が見えてきた形となります。

Number26はこれまでも、小売店などでのキャッシュアウトを無料で提供するなど話題を作っていましたが、Wirecardのソリューション自体が持つ制約の影響を受けていました。そのため、銀行サービスの「少しマシなUI」を提供できているだけ、という状態でもありました。

また、背景は不明なもののアカウントを大量に閉鎖するなど、事業展開に制約を抱えていたため、ライセンスの取得はよりよいユーザー体験を提供するための大きなステップとなりそうです。

今後同社は、投資商品の提供のほか、スワイプだけで割り勘を行える機能などを展開する予定です。貯蓄性預金や、保険、クレジットカードなどを発行でき、同社によればこれまでのコストの5~10分の1の構造にできるともしています。口座開設も8分で完了すると述べており、同社口座は今後、よりスピード感をもってスケールしていくものと考えられます。

Brexitの余波により、ドイツは急にFintechスタートアップの集積地候補として注目されるようになりました。そのような中、英国はこれまでもChallenger Bankという表現でアプリ銀行のライセンシングを進めてきました。

Number 26は、生まれて18か月の企業にドイツで銀行ライセンスが与えられる、かなりスピード感のある事例でもあります。審査はBrexitを前提とせずに進められていたものと考えられる中、制度間の競争がある程度働いた結果といえるのかもしれません。Number26は逆に英国にも2017年には上陸したいと述べており、スピード感が注視されます。

今週の読んでおくべきニュース

タイの中央銀行もFintechへの制度対応を検討
システミックリスクの調査など

MarketInvoiceが資金調達
Brexit後の英国における初の大型調達案件。国内ビジネスで閉じているのも背景か

ナスダックが共同でFintechの指数を開発
KBWと開発、Fintechが定義される意味合いもあります

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