米国のFintech推進におけるCFPBの役割

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今週は米国にて調査出張を行っております。様々なヒアリングをしている中で、こちらの当局の果たしている役割が明らかとなってきました。

米国におけるFintech推進に関与する当局について、よく名前が挙がるのがCFPB(Consumer Financial Protection Bureau、消費者金融保護局)の存在になります。
同局は2010年に金融危機の反省のもとに設立された政府機関であり、主に消費者にとっての金融サービスの中の、住宅ローン、クレジットカードおよび学費ローンの商品における正しいビジネス慣行の確保などがその目的になります。

(設立時の議論については本リンクなどをご参照ください。)

さて、米国の大手Fintech企業で、たとえばオンラインレンダーに向けた政府のあり方の状況などを聞くと、多くのケースでCFPBがその中心的な存在として、ヒアリングやガイドラインを示している旨が聞かれます。そして、既存の金融機関に比較すると、概ね、より効率的で満足度の高い商品を提供できているFintech企業に向けて、容認的な態度を示していること、また、そのことがFintech企業にとっての制度的な不確実性を抑制している、という反応が返ってきます。

米オンラインレンダーを巡る近時の議論

以前、英国FCAのFintech担当者が訪日した際にもRegulatory Sandboxの創設にあたってはCFPBの取っている規制アプローチを参考にしたと述べていました。技術がもたらす新しい金融システムの可能性について、消費者保護を含めて、正しい慣行が確保されるための行政のあり方に尽力する姿が伺えます。

また、銀行におけるAPI開放においても、CFPBは主導的な役割を果たしています。英国CMAが発表したレポートにもあるように、API開放は競争政策を通じて消費者にとっての様々なメリットをもたらすものと位置づけられます。その中で、CFPBはこれを主導するサポートもしていると、金融機関APIに関する専門家は述べていました。

英国の銀行APIを通じた競争政策

なお、米国の他の当局ではOCC(通貨監督庁)がResponsible Innovationというキーワードを中心とするレポートを発行しています。

Supporting Responsible Innovation in the Federal Banking System:An OCC Perspective

決してFintechを特別扱いするわけではなく、消費者に対して正しい付加価値を与えるイノベーションを是認し、よりよい水準を確保していこうとする姿勢は、我が国においても大きく参考とされるべきではないでしょうか。

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