TransferWiseに見る銀行の役割変化

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米紙WSJは今週、銀行への依存度を下げるTransferWiseについて取り上げています

TransferWiseは、国際送金を担うサービスですが、多数の送金顧客をP2P技術でマッチングし、取引コストを圧倒的に安くすることができるサービスです。具体的には、国を超えて送金を行う際に、両方向の取引を相殺するだけのユーザーベースを抱えることで、実際に移動する金額を減らし、結果として手数料を減らすことができる仕組みとなっています(下記図表)。最近は法人向けのサービスの展開も開始しています

TransferWiseの仕組み

『FinTech入門』p119より引用

同社は圧倒的に安いサービスを提供する一方で、最初の入金や最後の出金については、提携先となる銀行を利用することが必要となっていました。この状況はコストを高めるのみならず、米国では規制面での問題も発生していました。送金手続きが州ごとの規制を受ける中、米国のニューハンプシャー州においては拠点を持たないことから、手数料収入を返納するといった処分が行われています。そのほかにも、英国におけるパートナーの銀行でも不適切な慣行があったとする処分が下されていました。

しかし、状況は変わりつつあります。同社は米国において、昨年以来州法ベースの送金業ライセンス※取得に向けて動きつつあり、既に37の州でライセンスを取得しているほか、ライセンスが不要な3つの州でも営業を行っています。この動きが進展すれば、いずれTransferWiseが単独で、様々な国における格安の送金サービスのハブとなり、既存の銀行に全く依存しない仕組みを作り上げることが可能となります。また、パートナーに依存せず、自らコンプライアンスをコントロールすることが可能となることも利点です。

同社CEOは従来から、いずれは自社で免許取得を行うとビジョンを述べてきており、これは想定通りの動きともいえます。自ら強みを作り上げたサービスが、当初は既存のインフラに依存しつつも、最終的にはその仕組み自体を取り込んでしまう好例といえるのかもしれません。

※当初記述した銀行免許は「州法ベースの送金業」の誤りでした。訂正してお詫び申し上げます。

韓国における銀行APIプラットフォームの進展

韓国の金融委員会は、銀行や証券会社のAPIを利用可能とする共通オープンプラットフォームを準備しているとのことです

同プラットフォームは、明細の参照のみならず送金も含めたAPIを利用可能とする見込みとのこと。従来であればユーザー企業はAPIを利用するために、個別の金融機関との相対契約を求められてきた中で、今後は政府が提供する共通API仕様に即した開発が可能となる模様です。

既に16の商業銀行と25の証券会社がこの仕組みには含まれているとのこと。決済機構やセキュリティに関する政府部局もこの動きをサポートするという、国を挙げた動きとしては世界の先端に近い取り組みといえそうです。

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