米国で議論が進むFintech型銀行ライセンス

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket

今週、American Banker誌において、最近の米国における銀行免許のあり方に関する議論が取り上げられています。

米国のFintech推進を巡る議論の中では、消費者の選択肢強化に向けたCFPBの立場がその特徴的なものともいえますが、通貨監督庁(OCC)における連邦レベルでのFintech型銀行ライセンスの創設が論点として注目されています。

米国では銀行の認可にもさまざまな種類・レイヤーがあるものの、元々州ごとに銀行の運営が規制されてきた歴史的背景もある中で、州ごとに異なる規制が存在し、多くのインターネット企業にとってのハードルとなってきました。

また、それ以外にも、例えば融資ビジネスにおける規制においては、従来は対面型の住宅ローンを想定した法体系をベースに、現在のオンラインレンダーが多くの規制に服するなど、リスクの変容に対して必ずしも効率的とは言えない体系があるのも事実です。Fintech業界の政策提言団体であるFinancial Innovation Nowが7月に発表したレポートでは、仮想的なレンダーや送金業種が不必要ともいえるほどの規制対応コストを負担している旨が、丁寧に説明されています。

そのような中、3月にイノベーションを適切に取り込む旨の報告書を発表しているOCCは、米国全体で活用することができる、Fintech向けの銀行ライセンスの創設に向けた議論を進めています。既に反対意見も含めて議論が進む中、先述のCFPBが21世紀の革新的な行政機関を目指し、新しい行政のあり方に向けた世界観を生んでいくのでは、と見られています。

規制業態においては、コンプライアンスファーストであることと、供給者の論理が同一視されることが往々にして発生します。適切な消費者保護や、過度のシステミックリスクが発生しないことは当然ではあるものの、その延長で金融サービスへのアクセスが難しかったり、選択肢が狭められてしまうことは、制度の本望とはいえないものとなります。インターネットが個人と専門家の距離感を変え、また、情報を取得・比較するコストを劇的に下げてきた中で、過去の対面型規制との比較や、その更新は、消費者の目線から、長期的な価値に向けて行われるべきものといえます。

欧州に目を転じても、今年6月以降、話題を賑わしている英国のBrexitですが、Fintechについては昨今は離脱が規制上の制約を少なくするため、プラスに働くのではないかとする論調も出てきています。

消費者が安心し、効率的に理解できる金融サービスが利用できることは、結果としてスピード感があり、正しい金融仲介をもたらします。このような規制のあり方に向けて、今後のOCCに向けた議論の深まりが注目されます。

今週の読んでおくべきニュース

Payoneerが180m増資

「AIでデータサイエンティスト要らず」、SalesforceのAI戦略

Instech10選

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket

SNSでもご購読できます。