シンガポールMASが本格的な制度イノベーションを発表

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今週、当社も出展したSingapore FinTech Festivalでは、同国の中央銀行であり、金融監督官庁でもあるシンガポール金融管理局(MAS)からの、金融制度に係る抜本的な革新案が発表されました。

MAS高官であるMenon氏のスピーチは全文がサイトに掲載されていますが、目立つトピックを抜粋すると

・規制はイノベーションの助けとならなければならない。当局はイノベーションの理解を続けていく必要がある反面、熟慮されていない規制はそれを阻害する可能性がある。規制がイノベーションを先回りすることがあってはいけない。そのためにも、リスクの重大さや大きさを基準として、規制することを検討していくべきである。新たな技術がもたらすリスクが何らかの基準を超えた際に、規制を行うということになる

・決済関連の規制はActivity Basedとするべきであり、シンガポールではそれは一つのライセンスがあれば様々な決済活動を行うことができ、決済のタイプ別の規制の個別項目に従えばよく、それが消費者保護やサイバーセキュリティに対応できる内容となることが必要である

・MASがクラウド環境が嫌いだ、という声が聴かれるがそのようなことはない。MASは金融機関がクラウド環境を使うことに反対はしていない

・金融のアドバイスに関して、MASはそれがテクノロジーを利用しているか否かは無差別と見ている。近いうちに、ロボアドバイザーの採用するアルゴリズムや業態への監督について、提言を行っていく予定

・本日(16日)Sandboxのガイドラインのファイナル版を発表している

・FS-ISACをシンガポールにおいても設立する。サイバーセキュリティ対策に向けた、アジア初のケースとなる

・CAS(Central Addressing Scheme)とUPOS(Unified Point-of-Sale)という二つの決済インフラの構築を進めている。CASは、電話番号や国民ID、メールアドレスやソーシャルメディアのアドレスを使った送金が可能となるインフラ。UPOSは、複数のカードやNFCを含めた支払手段を、一つの端末で処理することができるもの
・国営の本人確認インフラを整備中。既存のインフラMyInfoを用いて、一度政府にパーソナルデータを登録すれば、その後の入力手続きなどを省略化することができる。パイロット版のサービスを2017年1Qにも銀行2行と実施

・クロスボーダー決済のインフラをブロックチェーンで提供予定。MASとシンガポール取引所、8つの銀行は、POC型のブロックチェーン技術を用いて外為取引を含むプロジェクトを進めている。R3とBCS Information Systemsが技術支援を行っている。同プロジェクトでは、銀行がMASに現金を担保として差し入れ、MASが発行するデジタル通貨を手にする。その償還も当然ながら可能

・参加銀行がそのデジタル通貨を送金し合う。この方式は、中央集権的な管理を行う取引よりも効率的であり、リスクへの耐久度も高くなる。これらの仕組みは、共通化された支払いゲートウェイを用いることができるため、銀行がバックエンド側のシステムを自ら書き換える必要はない

・金融機関のAPIエコノミーに向けて。“Finance-as-a-Service API Playbook”を本日発表する。望ましいAPIのあり方についてのガイダンスをもたらすことがその狙い。なお、今週を通じて様々な金融機関がこの活用についての発表を行っていく予定

など、どれを見ても業界を大きく前進させる要素を秘め、先進的当局としてのコミットメントを存分に示す内容となっています。

それぞれの施策が潜在的に生みうる価値がを含めて、ぜひ原文の一読をおすすめします。

また、API Playbookも400pを超える大部の資料になりますが、丁寧にAPIのあり方を記述しているものであり、今後の内外の議論における重要なベンチマークといえるものとなっていくものといえそうです。

今週の読んでおくべきニュース

マッキンゼーにおける昨今のトレンドまとめ
業務範囲の拡大、協業の拡がり、バリュエーションの保守化、規制の変化などを取り上げ

Zopaがチャレンジャーバンクの立ち上げ意向をアナウンス
元祖P2Pレンダーが貯蓄も含めた金融サービス提供を志向

欧州委員会におけるFintechタスクフォース立ち上げ
Digital Single Market時代における規制や競争、消費者保護のあり方に向けた動き

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