米国のFintech産業団体Financial Innovation Nowは11月30日、トランプ次期大統領に向けたFintech制度のあり方に関する意見表明を行っています。
11月30日に公開されたレターは、その主旨として米国の消費者やスモールビジネスにとって金融サービスの使用価値を高くすることをその目的としています。
その内容の中でも最重要のポイントは財務省内にテクノロジー担当の政務次官を置くことであり、米国の国家としてのビジョンと戦略に向けたと調整を、Fintech企業が雇用を生むことや、消費者や経済に向けてよりよい競争と技術革新を創出することを求めています。主な要望を要約すると
国内の金融テクノロジーに関する雇用を伸ばし、競争と技術革新を促進するためのビジョンと戦略調整
そのためにも、テクノロジーの潜在的な力を評価する規制当局の責任者を任命すること。昨今、CFPBなどいくつかの金融当局は、ビジネスを伸ばし、従来リーチできなかった層へのサービスアクセスをテクノロジーが可能としたことに気付き始めており、この動きを我々は歓迎している。OCCもテクノロジー理解を深めようとしている他、財務省も同様にスモールビジネスへの融資が拡大する可能性に言及している。このようなイノベーションの考え方に重きを置き、それが競争を促進する理解のある当局担当者を任命することを要求したい。特に、財務省の中でテクノロジー担当の政務次官を置き、連邦政府の様々な規制当局の方向性の調整を行うこと
カード支払ネットワークにおいて、セキュリティや本人確認に関する最新のテクノロジーを取り込めるよう、オープンな枠組みが展開される動きの支援を行うこと
送金に関する許認可につき、州ごとに異なる体系を共通化するべく、議会と州当局と協調すること
消費者は自らの金融機関口座のデータに対して、外部のアプリケーションや技術を経由しても公平なアクセスを得られるように努力すること
スモールビジネスのオンライン融資に向けた制度を簡素化すること
安価でセキュアなリアルタイム決済ネットワークをすべての米国民が利用できるように制度整備すること
旧来からのアンバンクド問題の解決に向けて、モバイルサービスの普及促進を行っていくこと
従来からもFINはレンディングなどの分野における制度要望を行ってきましたが、本レターではある意味その全体像が網羅されたリストになっているとの印象を受けました。
英国であればFintech大使に相当する任命が存在していますが、代表的な政府担当がいること自体は大きな意味を持ちます。わが国でもこのような動きや声(歌声?)は高まりつつある中で、大変参考になる動きといえるのではないでしょうか。
今週の読んでおくべきニュース
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今週の読んでおくべき一冊
決済の黒船 Apple Pay
簡単で読みやすいだけでなく、米国の決済プラットフォーム競争や、日本へのインプリが書かれています
執行役員 CoPA(Chief of Public Affairs) 兼 Fintech研究所長
瀧 俊雄
1981年東京都生まれ。 慶應義塾大学経済学部を卒業後、野村證券入社。野村資本市場研究所にて、家計行動、年金制度、金融機関ビジネスモデル等の研究業務に従事。スタンフォード大学経営大学院、野村ホールディングスの企画部門を経て、2012年よりマネーフォワードの設立に参画。経済産業省「産業・金融・IT融合に関する研究会」に参加。金融庁「フィンテック・ベンチャーに関する有識者会議」メンバー