IOSCOによる証券業へのFintechインパクト分析

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証券監督者国際機構(IOSCO)は2月8日、Fintechがもたらしうる証券業界・資本市場への影響をまとめたレポートを公開しています。

同レポートは4つの技術要素における影響を見たもの(他にも新興市場での影響も分析)となっており、それぞれのジャンルにおける今後の課題や規制のあり方を見ています。

個別に、粗くまとめてみると;

1.資金調達市場における新たなプラットフォーム
課題:プラットフォームにおいて募集される投資案件が公募的な意味を持ってしまうこと。特に不十分な情報開示のもとにそれが行われたり、詐欺的行為が行われてしまう可能性。
解決の方向性:従来の証券関連法制における、情報開示や公募ルールに沿った制度整備が行われること、および、様々なリスクの管理体制を改めて見直していくこと。

2.個人向け投資プラットフォーム
課題:未登録事業者による投資勧誘や、自動化が利益相反のある状態を生んでしまう可能性。また、投資一任運用が投資家の意図なく行われたり、適合性が見過ごされる可能性。
解決の方向性:適合性の原則や、規制遵守の体制が最近のプレーヤーの姿に対してもあてはまっているのかの制度的点検。

3.機関投資家の取引プラットフォーム
課題:ストレステストの不足、新たなシステムを使いこなせない可能性、市場機能が新たなシステムにおいてマッチングへの失敗など
解決の方向性:新たな取引を継続的にモニタリングしつつ、新たに入手可能となるデータを分析を含めて活用していくこと。

4.分散型台帳技術
課題:スケーラビリティ、相互運用性、サイバー攻撃への耐性、ガバナンスの管理(変化を巻き戻すことが難しいこと)、スマートコントラクトの暴走など。
解決の方向性:規制当局が一部のノードとして参加すること、個別に見た実務的な分析の深堀り。

といったポイントが述べられており、ポイントを押さえた適切な分析と、現実的な方向性が記載されたレポートであることが窺えます。

Fintechの話題の多くは、その話題のキャッチーさからしても、銀行に対する破壊的な存在、と取り上げられることが頻繁にあります。また、どちらかといえば相対型(銀行的)金融の方が、市場型(証券市場的)金融よりもテクノロジーによって受ける影響が大きそうなことも想像に難くありません。

そのような中で、証券市場に対する影響がきれいに整理され、次のステップに向けた処方箋までもが描かれている本内容は、関係者にとり必読的な位置づけのものといえそうです。

※著者はこのようなグループに参加しており、本レポートのご教示を頂きました

今週の読んでおくべきニュース

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