250年ぶりのクリアリング・バンク

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少し前になりますが、2月28日に英国において、250年ぶりのクリアリング・バンクの設立が発表されました

その名もClear Bank。大手送金サービスであるWorldpay社の創業者、Nick Ogden氏により設立された会社となります。

同社は信用組合・住宅金融組合、銀行やフィンテック企業に向けて、清算・決済業務を提供するものとなります。英国の決済インフラのBacs、CHAPSやFaster Paymentsのすべてに接続しており、携帯電話を通じた資金移動にも円滑に対応することが可能となっています。

Ogden氏はもともと、RBSに2002年にWorldpayを売却したのち、複数のFintech企業の経営やベンチャーの育成に関わってきました。そのような中で、決済システムやClear Bankの技術の活用により、様々な企業がより簡単にデビットカードや決済手段を提供できるようになる、としています。

とはいえこのニュースの大きな目玉と言えるのは、250年ぶりのクリアリング・バンクへの免許という点になります。これまで、クリアリング・バンクと呼ばれてきたのはHSBC、ロイズ、RBSとバークレイズでした。同様の機能を有するClear Bankは決済専業ということもあり、個人に対するサービスは提供しません。B2B経由で預かる資金はすべて中央銀行の当座預金への預け入れになり、自社事業のカニバリゼーションもないことから、外部接続APIを準備してサービスレイヤーでの金融機関の競争を促すものとしています。開業は本年8月を予定しています。

Ogden氏はこのプロジェクトを3年間極秘で進め、30人の開発者により、Microsoft Azureを活用する銀行として免許を取得しています。現在は50名の従業員と共に、ロンドンの有名なGherkinビルに居を構えています。現時点では資金ニーズは低く、2020-21年ころまでは資金調達は不要と見ている中で、向こう6か月は静かに開発を続けていくものと見られています

Ogden氏のコメントとしては、このプロジェクトを通じ、銀行産業が様々なレガシーシステムの制約を受けてきた中で、新たなインフラ面での技術革新や顧客の持つ基準、業務効率性を追求していくことが可能となり、結果として、年間20~30億ポンドものコスト削減が実現されていく可能性を述べています。

英国ではFaster Paymentsを含めて、決済インフラの高度化に向けた、準公的な取り組みが喧しく見られてきました。チャレンジャー・バンクなど、銀行そのもののあり方を再定義する政府像としては世界でも類を見ないスピード感がそこにはあります。そのような中で、とはいえAtom Bankなどのサービスドリブンな業態が見られてきた中、Clear Bankの立ち位置はもはや爽快とすらいえるものではないでしょうか。

今週の読んでおくべきニュース

全国銀行協会「オープンAPIのあり方に関する検討会報告書-オープン・イノベーションの活性化に向けて-【中間的な整理(案)】」
事務局の尽力で作り上げられた整理(案)

「金融モニタリング有識者会議報告書 ―検査・監督改革の方向と課題― 」
実務家レベルでの共通言語として必読

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