欧州委員会のコンサルテーションペーパー

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今週23日、欧州委員会はFintechに関するコンサルテーションペーパーをリリースしています。同ペーパーに対するコメントは6月15日まで募集されています。

このペーパーは、欧州委員会のユンケル委員長が掲げる“Connected Digital Single Market”構想の一部として、Fintechが金融サービスにもたらす可能性や課題点を明らかにしようとするものです。欧州委員会は、Fintechに関する政策のあり方として、1.技術的な中立性(あくまで規制は行為に対してかかり、技術的な提供方法の違いには依存しないこと)、2.規模の相当性(事業の規模や重要性、複雑性等に応じて規制は定められるべきということ)、3.競争促進(市場の透明性を向上し、消費者やビジネスの利便性に資すること)、の3要素を重視しています。その過程である本ペーパーはFintechがもたらしうる社会変化の簡潔なまとめにもなっており、参考になります。

取り上げられているトピックの一部を見ると、制度面での議論としてはややお馴染みにもなってきた、AIによる投資判断がもたらしうるプロシクリカリティや、P2P融資などで起きうる不正、保険商品における価格差別がハイリスクの加入者を排除してしまう可能性、といったトピックに関する情報提供を求めています。

また、可能性の面では、様々な新しい技術的な選択肢の中で、何がコスト削減に資するのかを丁寧にヒアリングしようとしている印象があります。とりわけ、分散型台帳等のみならず、RegTechにおける進展が、制度的なサポートを得ることでどれくらいの効率性をもたらすのかには高い関心があるように見られます。

4つの大項目で構成されているペーパーの最後の項目は、データポータビリティとセキュリティに関するものとなります。中でも問い立ての中では、分散型台帳とプライバシーの保護への関心も言及されており、PSD2以降の世界においても、決済以外ジャンルの金融情報の流通や活用にむけた問題意識があることが読み取れます。

このペーパーの質問集では(当然ながら)EuropeやCommissionが主語となっていますが、こちらをWorldやJapanとして入れ替えて読むと、割りとどこでも通じるものであることに気付かされます。着実に市場機能を高めようとするべく、ある種の理想論的な見地から制度整備を継続する欧州のあり方は、引き続き注目されるべきものといえます。

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