学術研究シリーズ:決済手段のコスト

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先月、カナダの中央銀行は、自国における決済手段のコストに関する研究結果を公表しています。以下ではその主なファインディングをご紹介します。

同研究が取り上げるのは現金、クレジットカード、デビットカードそれぞれのコストで、個別のプレーヤー(消費者、商店、金融機関)が個別に感じるコスト感覚と、社会的に発生するコストを分けて検証したものとなります。

興味深いのは、例えば、それぞれの支払手段において、実際に消費者や商店が支払うコストの中には、カード支払ネットワークの費用に加えて、支払に要する時間が勘案されている点です。支払い所要時間を方法別にみたものはこちら。

個別主体が感じるコストの総和は、下記の図表のPrivate Costsに相当し、ケースによってはこれらが消費を抑制する点もポイントとなります。

上記のPrivate Costsのパートを見ると、例えば社会的にはデビット取引が一番低いものの、消費者からするとクレジットカードに関して負うコストが一番低い、といった差異の表れが判明しています。

また、取引を変動費と固定費に分けて分析すると、社会的に見たときに取引金額ごとに最適な決済手段が判明していきます。

大変興味深いのは、ほとんどの取引金額において、デビットカードが最も低い変動費を発揮している事実です。日本におけるデビットカード利用の低さを鑑みれば、同様の研究も待たれるところです。

また、応用的な発想として、消費者や商店にとって時間もコストに含まれていく場合には、日本において海外よりも反応速度の速いNFCによる電子マネー決済や、スマートフォンによる事前決済といった普及した場合のインパクト等は、異なるインプリケーションをもたらすものとなります。

Fintechはしばしば破壊的な変化に対する期待値が取り沙汰されますが、キャッシュレス化がもたらす効果を地道に理解していくことも、社会的な位置づけを理解する中では重要な要素となるのではないでしょうか。

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