バーゼル委員会によるFintechへの提言レポート

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バーゼル銀行監督委員会は8月31日付で、Fintechがもたらしている変化を捉えた監督の新しいあり方に関するコンサルテーションペーパーを公表しています。

銀行の監督という軸をベースにFintech政策を検討することは王道的ともいえるアプローチですが、このような文書は網羅的にポイントを解説するため、既知と思われるポイントも含めて、一読する価値が高いものとなります。このペーパーでは、新たな変化に対して、観察されている事実と推奨される対応を、10個の論点についてみています。それぞれを要約すると

1.銀行業務の範囲や性質は技術の取り込みやビジネスモデルを通じて変化する。金融システムの健全性を保つために、イノベーションの阻害をしてしまうリスクも最小化すること
2.銀行自体にとっては、Fintechがもたらすリスクは、戦略、オペレーション、サイバー、コンプライアンスの4種に分類される。これらに対して、堅牢で戦略的なプランを持ち、潜在的な参入者による収益インパクトに備えていくことが必要。新たなプロダクトを提供していく際にも上記の4種のリスクの勘案がなされるべき
3.新たな技術をFintech企業や銀行が提供する場合、それ自体がもたらす新しいリスクも存在する。銀行の観点からも、イノベーションの裏側にある技術のリスクが適切に管理されること
4.Fintechの進展に伴い、協業や外部委託事例が増える中で、外部委託のあり方を整備し、銀行本体と同水準のリスク管理がなされること
5.既存の金融規制に加えて、データプライバシーやITセキュリティ、競争促進と反テロ・マネロン対策といった政策対応も必要となる。政府機関間での連携を行いながら、適切な監督体制を検討していくこと
6.融資や投資領域においては、多国間でのサービス提供を行っているケースも見られる中で、政策当局の国際的協調が必要となること
7.様々なサービスが技術の変化で提供形態を変える中で、監督モデル、職員の採用やトレーニングのあり方、ナレッジやツールを再考していくこと
8.分散型台帳技術、ディープラーニングや人工知能技術が進展する中で、これらを監督の効率性や専門性の向上に活用できないかを検討すること
9.既存の金融規制が想定していない新たなビジネスモデルについて、規制、監督および許認可のあり方を再考し、顧客保護や安全なシステムの提供と、新たなビジネスの参入のバランスを取ること
10.アクセラレーターや規制サンドボックス、イノベーション・ハブといったアプローチのように、プレーヤーとの交流接点や技術振興に向けたプラクティスを各国の当局間で共有していくこと

が述べられています。

それぞれのポイントは真新しい概念ではないものの、イノベーションを阻害しないためのあり方に重点がかなり置かれている印象です。当局の運営や働き方も国によって異なる中、一つの答えがない問いではありますが、イノベーティブなアイデアと、変化を前提とした監督のあり方について、金融のみならず、様々な産業の参考にもなる内容といえるのではないでしょうか。

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