信用スコアリングと確定申告ソフトの相互参入

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昨年から今年にかけて、米国の信用スコアリングと確定申告領域の最大プレーヤーの間での相互参入が見られています。

最初に動きを見せたのは2017年1月の、Credit Karma社による確定申告サービスへの参入でした。

同社はユーザー60百万人超、累計で3.6億ドルを調達し、年間収益も5億ドルを上回ってきた、信用スコアリングの雄といえるプレーヤーです。2017年の申告シーズンから無償での確定申告サービスを開始し、2018年のシーズンに向けてはより細かなニーズにも応え、他社(Intuit、HRブロック社等)提供サービスからの乗換にも対応を進めています。2017年のシーズンでは100万人が同サービスを利用し、業界内では5-6番目の位置にいたとみられています。

その目的は、本体サービスでの顧客獲得にあるとみられています。信用情報の中でも大きな要因を占める所得のデータについては、様々な推定を行う方法がありますが、とはいえ確定申告に用いられる、証憑付きの所得の値は高いレベルの確度の判断情報を提供するものとなります。確定申告をフックに顧客の流入を促し、最終的により適した保険商品やクレジットカードの紹介モデルに繋げる形は、理想的な動線設計として機能していると考えられます。

一方、上記の動きに触発されてか、米会計ソフト最大手のIntuit社は昨年10月に、確定申告市場で7~8割のシェアを持つともいわれるTurboTaxのデータを活用した”Turbo”という名称のサービスをローンチしました。同サービスは、TurboTaxによる確定申告データに加えて、Mintから得られた支出データを組み合わせ、新たな信用スコアリングを提供するものであり、そこからさまざまなオンラインレンダーへの連携を可能としています。ある意味、Credit Karma社の逆を行く領域参入ともみられる動きでありますが、クラウド型の情報サービスが、IntuitというIT業界での老舗企業に対して新たな境界線をもたらしているものともいえます。

昨年10月のMoney20/20での発表時に、Intuit社はそれだけでなく、納税データの中には個別の地域別の寄付の金額や、ユーザー全体での金利支払い額(こちらが5兆円にも達する中でTurboの設立に繋がったと説明)、最適「ではない」ローンの割合が50%であることなど、自社のプラットフォームの中にある、金融情報と最適解の間のギャップを認識していました。信用と税務という、消費生活と社会生活の二つの側面のコアデータの活用に関して他の追随を許さない2社の更なる動きが、今後とも注目されます。

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