米国通貨監督庁(OCC)は7月31日に、Fintech専業銀行制度の免許申請を受け付け開始しています。
当ブログでも幾度に渡って取り上げてきましたが、これまで、州政府金融当局との訴訟や長引いた制度議論などを経て、制度が動いた形となります。
OCCは声明文の中で、銀行産業自体が変化を遂げる中、新しいイノベーティブな事業運営を行える企業群も、伝統的なプレーヤーと同様にサービス提供に向けた機会を持てることが必要であると述べています。そのため、慎重な検討と、幅広いステークホルダーからのフィードバック、パブリックコメントの受付を2年間にわたって行ってきました。
その過程で、OCC内部にOffice of Innovationを設立し、様々なイノベーション関連の窓口と案件管理などを行ってきました。米国には州法・国法それぞれの銀行ライセンスがありますが、後者の中でも、専門的な業務を目的とする特殊銀行の免許(Special Purpose National Bank)を付与することで、全国的にも単一の規制・監督体系を運用することが可能であると述べています。なお、他の特殊銀行の形態としては、クレジットカードの発行体であったり、信託業務、キャッシュマネジメントといった業務に特化したモデルなどがありますが、預金保険を伴う預金の受け入れは制約された業態となります。
Fintech企業は免許取得にあたり、他の特殊銀行となにか異なる基準の規制に置かれるわけではありません。通常の、規模、リスクプロファイルと事業の複雑さを勘案した特殊銀行の免許付与の基準に照らされることとなります。
注目されるのは、Fintech型銀行は、金融包摂へのコミットメントを実現しているかも期待として述べられている点です。事業モデルを通じた平等なサービスの提供を行うことが求められることが明記されており、免許申請マニュアルの補足資料ではAppendix Bにおいて、それまでサービス提供が困難であったセグメントに向けた提供目途や目標を述べることが必要とされています。
このような社会的目的が金融ライセンスに対して明示されている点は、ある種意外にも見えるものの、CFPBの時代から貫かれている、米国当局のテクノロジーと金融サービスの可能性に対する期待を、そのまま記述しているようにも見られます。そこにはテクノロジーが言葉として独り歩きせず、制度や社会的期待と共に説得力を持っていくものであることを感じさせるものとなります。