米国にみられる運用報酬体系の模索

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今週、複数のニュースが米国における資産運用産業の新たな報酬体系の模索に触れていました。

Aperture Investorsは2018年に設立された運用会社です。創設者のPeter S. Krausはアライアンスバーンスタインの会長兼CEOやゴールドマンの資産運用部門の責任者を務めた、筋金入りのプロともいえる人物ですが、同社は自社の創業ストーリーにおいて、運用会社は生得的にはリターンを上げることよりも、運用残高を積み上げるようにインセンティブが働くこと、また、運用報酬の分だけベンチマークに負けるように宿命づけられていることに触れています。

同社が提供する投資信託の運用報酬は、基礎部分ではパッシブETFのそれと同水準としつつ、ベンチマークを上回る成果を出した場合には、アウトパフォーマンスに対して30%に相当する成果連動型の運用報酬を受け取るものとしています。また、損失や利益は2年間の繰り越しを行うことで、ある年にパフォーマンスを上げ、ある年にはマイナスであった場合には、成果報酬は3年間の通算で図られるような仕組みとなります。

このような仕組み、ヘッジファンドの報酬体系とも似たものと言えますが、固定費用が一般的なETFと同様になっていることで、アルファ(市場を上回る収益)のみを価値源泉とできていることが、商品の透明性を上げることに寄与しているともいえます。日本でも、多い事例ではありませんが信託報酬を成果連動型とする投資信託やラップ口座は存在してきましたが、なかなか固定部分をETFと同等とする意思決定はされてはいないのでは、と思われます。

また、別のニュースとしては、チャールズ・シュワブが30ドルのサブスクリプション型の運用サービスが注目されます。同サービスは初期登録で300ドルを支払ったのちには、月額固定で30ドルのサービスとして、資産運用とCFP資格保有者によるガイダンスを活用できるものとなります。Investment News記事によれば、同社ではこれまでも無料のロボアドバイザーサービスであるSchwab Intelligent Portfoliosを提供してきた中で、このようなサービスには従来、0.28%の費用を別途課してきました。今後は、この金額が30ドルの固定になる形です。ロボアドはある意味非常にシンプルな商品であることと、アドバイスに関わるFPの労力は確かに固定的な費用を伴うものなので、この手数料体系もまた、わかりやすいものといえるのかもしれません。

このようなモデルは従来からも事例としては存在していたものの、最大手ともいえるプレーヤーが打ち出してきたことは、「サブスク」型の概念が資産運用の世界にも浸透しうるという新しいメッセージを持っています。

運用会社とは異なりますが、証券投資の事例でサブスクといえばRobinhood Goldが思い出されます。同サービスは主に信用取引の余力を提供するサービスとなりますが、証券用語として金利の概念でそれを説明するよりも、サブスクリプション型の手数料としてその内容を打ち出しており、より、レバレッジをかけるというイメージよりは、固定の費用を払って、より多くのトレードを(Netflixのように)楽しめる、というようなイメージをもたせています。

消費者がサービスの付加価値を受け取る方法が進化する中で、ことさらコスト構造には敏感にならざるをえない資産運用のあり方がこのように大きく変化してきています。
日本でも実現可能な要素がある中で、いずれどのようなプレーヤーがそれを再現していくのか、注目していきたいと思います。

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