英オープンバンキングの進捗レポート

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英OBIE(オープンバンキング制度の推進主体)は7月16日に、オープンバンキングが2018年1月に開始してからの進捗と、これまでのラーニングをまとめたレポートを発表しています。

同レポートは2014年に多くの議論の端緒となった銀行におけるオープン・データのレポートの著者でもあったFingleton社とODIへの委託調査の形で執筆されていますが、内容は、英国で進みつつあるオープンバンキングの標準化が進む中で、PSD2の改善点が明らかになってきたことを主に述べたものとなっています。Executive Summaryの仮訳を下記に置いております。

PSD2の改善点としては、決済機能の向上や、制度的に求められる取引明細のAPI開放などとは別に、Fintech企業が銀行と交渉の上で利用するタイプの「プレミアムAPI」という概念を出しており、プレミアムAPIに対しては有償で活用するようなことが考えられる、という記載があります。レポート内にはその事例として本人確認データの伝達が挙げられています。

なおレポートの後半(p21)には日本を含む諸国におけるオープンバンキングの現状が記載されています。日本に関しては、制度整備やキャッシュレス化に関する制度的推進が述べられている反面、API連携においてFintech企業と銀行が交渉が必要となっているため、その進展度は低いという記載となっています。

以下は感想ですが、オープンバンキングは銀行のこれからの形を作っていくための、重要な取り組みの一つである中で、制度としてもプレーヤーとしても、質の高い試行錯誤を行うことの重要性が本レポートの随所から感じられます。標準的なAPIのあり方についても、例えば決済用のAPIの使い勝手に課題があると分かってきた中で見直しが提言されています。このような試行錯誤を制度全体で行うことで、やっとエコシステムの形成を行われ、そのことがTPPであっても銀行側であっても、新しいビジネスを作っていくことにつながる、という未来への理解があります。

本年5月7日付の自民党金融調査会の提言において、API連携に関しては「FinTech事業者による利用は、銀行に向けた制度整備、契約交渉等の実務的な接続負担が重く、また一部銀行とFinTech企業間で接続手数料について合意が難航するなど、予断を許さない状況である。」という記載があります。仮に、最初の試行錯誤が、接続が行えないことによって絶たれてしまえば、その後の事業創造の道も初めから断たれてしまうことにも等しくなります。現状は、銀行法に定められる契約期限が2020年5月末に迫る中、関わるステークホルダーが今一度危機感高く、未来に向けた取り組みを進めることが求められているともいえます。

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