Uberの金融サービスを裏側で担うカリフォルニアの地銀

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2019年10月28日付のAmerican Banker誌の報道では、Uberによる総合的な金融サービス構想が取り上げられています。同日発表され、話題を呼んだUber Cardもその構想の一部といえる中、その詳細が注目されるところです。

記事では、Uberが各サービス毎の金融サービスを統合し、1つのアプリ上で報酬の受け取りから資産管理までが完結するデジタルバンキングサービスをBaaSモデルによって提供する点を取りあげています。

 

(出所)Uber Newsroomより引用

これまでも同社は、ドライバーの報酬を受け取る電子マネー口座のほか、消費者向けにも電子マネー(Uber Cash)や高還元率を訴求するクレジットカードを提供してきました。これまではプロダクト毎にサービスが分離していた中、今後は一つのウォレットアプリ “Uber Wallet” に統合することで、報酬を受け取るドライバーから見れば収入・支出の一括管理が可能となります。さらに、Uberの金融サービス部門のピーター氏は今後、口座管理機能や個人間送金を可能にしていく意向を明らかにしています。

このように金融サービスを提供するUberですが、同社自身は銀行免許を取得しておらず、外部の銀行インフラを活用してサービスを提供しています。このような展開は、銀行側の視点からはBaaSモデルなどと呼ばれますが、Uberのほかにも、多くのネオバンクと呼ばれるプレーヤーをはじめとして、北米やEU圏で広がりつつある銀行の新しいエコシステム像といえます。

Uberの金融サービスは利用者側からみれば統一されたUIの元で提供されますが、裏側では、クレジットカードの領域の基盤は英銀行Barclaysの米国事業が提供しています。現行の決済に対する還元内容としては、Uberプラットフォーム(Uber Eats、ヘリコプター電動自転車等)上でのサービス利用で5%、Uber指定のホテルや航空券、レストランなどの利用で3%、その他の決済で1%のキャッシュバックを受け取ることができます。

一方で、Uber Walletのデビットカード及び電子マネーについては、Green Dot Bankがサービス基盤を提供しています。Green Dot Bankはロサンゼルス郊外のパサデナ市に拠点をおく地方銀行ですが、ビジネスモデルとしてはBaaSモデルを米国で最も古くから採用している企業の1つです。主なサービスとして、プリペイドカードの発行や同カードの口座管理サービスの提供、提携先の要望に応じた決済アプリケーションの基盤構築を行っています。


同行オリジナルの銀行口座では、決済額の3%が上限無制限にキャッシュバックされるほか、年率3%の普通預金口座を維持手数料無料で提供しています。他にもMoneyPakという専用のプリペイドカードをコンビニエンスストアなどで購入し、専用アプリからチャージすることで、送金先が保有するカードの発行者に関係なく即時に個人間送金が完了するサービスなど、自社のインフラを用いて利便性の高いサービスを数多く提供しています。

               

(出所) Green Dot Bank公式サイトより引用

同行のBaaSとしての取り組みは、2004年に「アンバンクトが金融サービスにアクセスできるように」という趣旨で、米国大手の小売りチェーンWalmartと提携したことが始まりです。また、2012年にはデジタル戦略としてモバイルバンク “Go Bank”を設立し、独自の銀行免許を取得しています。その後2015年には自行のBaaSモデルの確立を発表し、Uberとは2016年に提携を開始し、Uberの金融サービスの中核的な役割を果たすようになりました。他にも、本稿執筆時点で、Uberを始め、AppleのApple Cash、Stashなどに向けても基盤を提供することで、累計で500万口座以上が開設されています。

(出所) MoneyPak公式サイトより引用

このように、BaaSモデルは金融イノベーションと密接です。仮に、UberやWalmart自体が銀行業に直接参入すれば、コンプライアンスや銀行システムの運営に始まる、様々な規制・制度対応コストが発生します。このような、金融業のインフラを運営する企業が協業することで、コストを抑えた金融ソリューションの提供が可能となります。

Green Dot BankはGAFAを含む巨大な非金融業と協働することで、消費者に新たな金融サービスの顧客体験を届けているプレーヤーといえるかもしれません。同行の競合相手はデジタル戦略を推進する大手銀行であると報じられることも多い中で、BaaS的な動きが今後、大手銀行からも見られるかは注目されるところです。

日本ではまだ、BaaS型といえるような動きをしている金融機関は限られています。最も象徴的な事例としては、GMOあおぞらネット銀行の銀行代理業として展開を予定しているH.I.S. Impact Financeがありますが、既存のオフライン型の経済圏を含めて、多くの顧客体験がデジタルの領域に包含されていく世界観がある中で、既存の金融機関にとっても、インフラをどのように活かしていくべきかは、スピーディーな検討が待たれる領域であると考えられます。

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