2019年12月3日に米連邦規制機関であるFRS(連邦準備制度)、FDIC(連邦預金保険公社)、CFPB(消費者金融保護局)、NCUA(国立信用組合管理局)、OCC(通貨監督庁)が共同で、与信審査におけるオルタナティブデータ利用に向けた声明を公表しています 。
声明では、オルタナティブデータの活用が与信決定までのスピードを早め、現在の与信体系では融資を受けられない企業の評価が可能となると述べています。また、消費者 に対する与信審査時には家計データや家賃支払い履歴などプライバシーへの配慮が求められることから、「責任あるオルタナティブデータの利用」を推奨するとともに「従来の与信基準となるデータよりも明らかなリスクを引き起こすものではない」と付記しています。
連邦規制当局は、「企業が融資の返済力評価を目的としてキャッシュフローデータの利用を自動化する流れが起こりつつある」と認識して、このアプローチを容認する姿勢をとっています。
与信審査におけるオルタナティブデータの活用は、機械学習やAIによる審査の自動化・クレジットスコアの進化につながっており、借り手の選択肢を拡大するものとなります。
個人向けでは「これまで時間をかけて収支を評価してきた形から、データにより今後の収入見込みを推測できるようになり、画一的ではない情報から信用力を示せることは消費者にとって特に有益である」との見方を示しています。
米国の規制法である “Equal Credit Opportunity Act”(信用機会平等法)及び連邦法の “Fair Credit Reporting Act”(公正信用報告法)において、消費者はキャッシュフローデータへのアクセスを明示的に許可することが保証されています。また、債権者がキャッシュフローデータを利用する際には、借り手に対し説明や情報開示をすることが要求されています。これらは、人種や家族形態等によって信用機会の差別が行われないという立法趣旨を補完する位置づけにあるともいえます。
今回の表明は、散逸するデータを効率的に自動集約・自動分析する流れを推進するとともに、責任ある利用を求めていくべきという考えを示したものとみられます。技術の前向きな面を評価しつつ、データ時代の信用のあり方にも触れている点が意義といえます。