2020年1月20日、OBIEはオープンバンキングの利用顧客が100万人を超えた旨のリリース“Open Banking adoption surpasses one million customer mark”を発表しています。以下にその要約をご紹介します。
以下要約。
オープンバンキングの利用顧客が100万人を記録
オープンバンキング利用者数は急激な増加をみせており、直前の半年の2倍近くに及んでいます。2018年に決済サービス指令 “PSD2”を発効したことで、オープンバンキングを支え、個人やスモールビジネスが金融機関口座の連携を外部サービスとセキュアにを行うことが可能となりました。現在、オープンバンキングの利用顧客は200以上のサービスプロバイダを経由して、毎月2億件以上のデータコールを行っています。
オープンバンキングは、Yoltなどのアカウントアグリゲーションを行うプレーヤーの他にも、個人向け金融アドバイス、会計サービス、信用スコアリング、慈善事業への寄付など、サービスの幅も拡大しています。
非営利団体であるOpen Banking Limitedとの連携により英国の “Nesta Challenges”が “The Open Up 2020 Challenge”というコンペを開催し、イノベーションの促進が期待されています。15組のファイナリストには不動産賃借人の信用格付け、金融弱者や高齢者などへのサポートサービス、住宅ローンや人工知能など様々な業種のプレーヤーが含まれました。また、決済分野への進展も進んでおり、先月だけで5万件以上の支払いが行われています。OBIE(英オープンバンキング実施機構)は、CMA9の当座預金口座の顧客数が半年で2倍に成長したと述べています。
現在、オープンバンキングは個人と法人の当座預金口座、クレジットカード、オンライン電子マネー口座をカバーしています。そして、規制対象でもあるサービスプロバイダが昨年度末より100社増加し、204社にのぼります。
オープンバンキング普及に関わる識者コメント
イムラン・グラムフセインワラ氏(OBIEの受託者)
利用者の100万人達成は重要なマイルストーンですが、決してゴールではありません。オープンバンキングとは顧客が自身のデータにアクセスできるようにすることで、より望ましいサービスを享受できるようにすることです。競争環境を創出することで、参入企業と既存企業双方によるイノベーションの実現がみられています。このことは、利便性の向上と金融機関による顧客理解の大幅な強化に繋がります。2020年は金融産業でのオープンバンキングの導入が本格的に始まる年になると考えています。
ジョン・グレン氏(英財務省経済担当政務官)
オープンバンキングは英国で大きな成功を収めており、テクノロジー分野で世界的なリーダーとなりました。顧客の当座貸越を防ぐための支出管理から、融資へのアクセスを可能とするデータ活用に至るまで、オープンバンキングは利用者と企業に実質的な改善を提供してきました。今後、オープンバンキングが更に多くの人々に利益をもたらすことを期待しています。
クリストファー・ウーラード氏(FCA: 競争戦略部門責任者)
英国はオープンバンキングの開発において国際標準となる道を歩んできました。これは消費者の利益のための効果的な競争を促進する、当機構の目的をサポートする施策といえます。我々は利用者の増加を歓迎し、今後の継続的な発展を支援します。
今後の展望として、個人や企業がより幅広い財務データを管理できるようにすることで得られる、オープンファイナンスのメリットについても検討したいと考えています。最近はオープンファイナンスに関する意見募集を行い、個人の最善の利益を実現する施策やFCAの果たすべき役割についての意見を募っています。
ビル・ロバーツ氏(CMA: オープンバンキング責任者)
100万人以上の顧客が現在、支出管理を改善するためにオープンバンキングテクノロジーを利用していることは素晴らしいことです。今年後半にはオープンバンキングが更に拡大し、より多くの人々に恩恵を与えられると期待しています。
オープンバンキングは、革新的なサービスを通じて、よりシンプルでセキュアなお金の管理を可能とし、個人及びスモールビジネスにとっての銀行機能のあり方を大きく変え続けるものと考えます。
要約は以上です。
上記の数字感については様々な議論があり得るかもしれません。100万人の利用者は増加傾向にある中とはいえ、恐らくですが日本におけるAPI利用者数よりも少ないのが実態と言えます。一方で、一か月あたり200回のコール数は、日本における現下のアクセス頻度からすればかなり多い水準ともいえ、データの利用が制約を受けない場合の、理想的と思われるコール数の水準の一つのヒントにもなっているものと考えられます。
また、何より200社のサービスプロバイダ(日本におけるAPIを活用する電子決済等代行業及び決済代行会社に相当)が存在している点が重要といえます。APIの最も重要な意義は、技術開発のスピードを確保することによるPDCAの高速化であり、この観点では豊富なプレーヤーの土壌が欠かせません。規模の議論で日本の現状が優位にすらある中で、このエコシステム拡大の重要性は引き続き重要な課題と考えます。