ライドシェア市場で70%以上のシェアを持つUber社が、証券化による自動運転車の導入を検討しているとFinancial Timesが報じています。
2019年Q3時点では、配車サービス事業単体で前年比50%超の6億ドルの営業利益を出している同社ですが、Lyftをはじめ同業界にとって事業の黒字化が共通の課題となっています。Uberは、乗車料金の75~80%をドライバーに対する報酬として支出しているため、自動運転技術が収益性の大幅改善につながる予測があることは誰にも明らかな機会といえます。
一方で、米国でUberと契約する400万台以上の自動車全てを自動化し、更に自社で自動運転車を保有することは、現在のバランスシートを約6倍に拡大させることとなり、企業財務に大きな影響を与えるだけでなく、自動運転技術の帰趨という、同社ではコントロールできないリスクをかかえることにもなります。そこで、自動運転車を資産として証券化し、投資家に売却することでUberは資産の肥大化と自動運転技術特有のリスクを抑えられるスキームが検討されていると考えられます。
投資家は自動運転者を保有するSPVのキャッシュフローから持分に応じ、直接数%を通常の収入として配当を得るモデルが考えれます。投資による所得よりも税制的な優遇を受けられる点で、投資家のインセンティブが働くとみられます。
しかし、①一般的に証券化の資産として利用される不動産は財産的価値、建築場所など環境で価値の変動がある一方、自動車は利用開始後に短期間で価値が低下する事、②不動産は人身に危害を加えることが少ない一方で、2018年の実証実験中に問題となったように、技術的インシデントによる事故のリスクが払拭できていないなど、証券化の資産に自動運転車が適切かという課題は残されています。
テスラの創設者であるイーロン・マスク氏は自動運転車を「価値ある資産になる」と主張していますが、二つのイノベーション(乗り手と移動手段のマッチング、自動走行技術)の両立という課題にどう向き合っていくか、今後の動向が注目されます。