Lending Clubが2月18日、米国のネット銀行Radius Bankを1億8,500万ドル(約200億円)で買収すると発表しています。
Lending Clubは、米国で個人向けにオンライン融資の仲介サービスを提供しており、利用者は300万人を超え、2019年度の取引額は123億ドルに達しています。一方、Radius Bankは総資産14億ドルを有するネット銀行で、「ベスト・オンラインバンク2020」に選出されるなど、スマートフォンアプリから個人や法人に対して預金、融資、ローン契約など銀行の基本的なサービスを提供しています。
両社は融資サービスを提供する点では競合関係にあり、今回の発表は事業会社が金融機関を買収する事例として注目を集めています。買収による利用者のメリットとしては、実店舗を持たないオンライン金融サービスを提供する点で両社は共通しており、オンラインで預金口座を開設し、ローンや融資にシームレスにアクセス可能となることが期待されています。
Lending Clubのメリットとしては、銀行免許を保有する金融機関を買収することで預金業務の取扱が可能になることが挙げられます。その他、銀行手数料や資金調達コストが削減できることをプレスリリースで強調しており、Lending Clubのスコット・サンボーン氏は「資金調達コストで1500万ドル、金融機関に対する手数料を含めると年間4000万ドルのコストを削減できる」と述べています。
IR資料では、銀行を傘下にすることで、10億ドルの貸出に対し年間4000万ドルの利息収入を収益とすることができ、Lending Club単体で現在の11%の利息収入の収益を30%にまで引き上げるなど、持続的な収益モデルを確立できると述べています。最終的な取引完了までには12~15ヶ月を要する見通しを立てています。
Lending Club IR資料より引用
Radius Bank側にとっても、米国でデジタル銀行の競争が激しくなる中、Lending Clubの傘下に入ることはデジタル銀行としての競争優位性を高めるものであり、幅広い顧客基盤を利用した融資事業の拡大が期待されています。
直近で米国で銀行免許を取得した企業としてはVaro Moneyがあります。同社は2月10日にFDICの承認を受け、米国初のモバイル銀行となることが報じられましたが、2018年にもOCCからの銀行免許の仮承認を受けながら、FDIC加入の認可保留中に取り下げた背景があります。報道では今回の承認までに1億ドルを費やしたといわれており、銀行業の参入は事業会社にとってハードルの高いものといえます。
事業会社が預金サービスを提供する場合、自社が銀行免許を取得する方法が主流であった中で、今回の買収はその流れを変えるものとなるのか、今後の動向が注目されます。