Google Payが11の金融機関と組む理由

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Google Payは2020年11月18日、米国の金融機関とのパートナーシップ締結によりデジタルバンキングサービスの提供を2021年1月より開始すると発表しています

Google Payは2018年1月の提供開始以降、全世界で約1億5,000万人が利用する決済サービスですが、今回新たに “Plex Account”と呼ばれる預金口座の開設をGoogle Payのアプリ上から可能とすると発表しました。 “Plex Account”はネオバンクが銀行のインフラを用いて預金や融資サービスを提供する “BaaS(Banking as a Service)”と類似するモデルですが、複数の金融機関からユーザーが開設する銀行を選択し、決済等の機能と紐付けることができる点で新たな取組みといえます。

“Plex Account”は口座の種別(普通預金、当座預金)に関わらず、維持手数料や預金残高の制限がない預金口座であり、若年層や銀行の支店が存在しない地域の利用者が、モバイル端末から口座開設が可能となります。ユーザーはGoogle Pay上で金融機関を選択し、連携先銀行の口座開設を行うため、預金以外にも各銀行独自のサービスを受けることも可能になるとみられます。また、公式な発表ではないものの、今後は預金やオンライン決済サービス以外にも提携金融機関によるプリペイドカードの提供もされるのではないかとの報道もあります

Googleは連携する11の金融機関として、Citibank、Stanford Federal Credit Union(注)、Bank Mobile、BBVA、BMO Harris、Coastal Community Bank、First Independence Bank、Green Dot、Seattle Bank、SEFCU、Harbour Bank of Marylandを挙げており、地域や規模も様々な銀行の口座の開設や、Google Pay上から口座の入出金情報の確認や家計管理などが可能となる見込みです。

(※画像: Google公式リリースより引用)

今回の発表について、Google PayのCaesar Sengupta氏は「以前からGoogle Payの機能を再設計する動きはあったが、2020年は特に決済など金融サービスをデジタル化するニーズが急増した」と述べています。複数の金融機関との連携を行った背景としては、Citiなど規模の大きな銀行は支店が存在しない地方都市の顧客基盤が弱く、地域の金融機関は若い世代の顧客基盤の構築やサービスのデジタル化について課題を抱えており、それら両社の課題を解決する狙いがあると考えられます。

米国の銀行業界では、これまで巨大プラットフォーマーの銀行業の参入を業界圧迫の脅威として捉える意見も多かった中、今回の提携先であるCitibankのエリス・レスリー氏は「Google PayはCitibankにとって、金融のエコシステムの構築における重要なパートナーとなる」と述べており、Seatlle Bankのジョン・ブリザード氏は「米国の地域金融における最大の課題は、古くなりつつある金融業のテクノロジーを更新することである」と発言するなど、業界の変革の為に必要な動きと捉える意見もあります。

これまで、ネオバンクやBaaSとして預金等銀行サービスを提供する民間企業は単体の金融機関と提携を行い、預金や融資サービスを提供するケースが大半であった中で、利用者が複数の金融機関の中からニーズに応じて選択できる「マルチ・ネオバンク」として先進的な事例といえます。巨大なテック企業が、規模やビジネスモデルも様々な金融サービスを単一のアプリから提供することで銀行サービスにどのような変化がみられるのか今後の動向が注目されます。

(注) 1959年にスタンフォード大学の職員によって設立された信用組合組織で、1994年に米国初のオンラインバンキングサービスを開始している。

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